149-2.手作りリース(エピア視点)






 *・*・*(エピア視点)









 ちょっと、びっくりすることが起きた。



「「「エピア!! 花冠じゃなくて、リースの作り方教えてくれ/んか!!?」」」



 恋人のサイラ君を含めて、このお屋敷だと三馬鹿とも言われている、庭師見習いのピデット君に執事バトラー見習いのシャミー君まで、菜園に押しかけてきたのだ。



「……リース?」


「せや! 花冠やと日持ちせんし、保存の魔法効かんやろ? だもんで、リースや」


「……姫様に?」


「俺、俺! 昨日びっくりしたんだけど、マックス様が慌てて抱えて帰ってきたからさ? 最近ちょくちょく調子悪いし……休んでる時に見て楽しめるんならって」



 たしかに。


 けど、それは姫様だけの異能ギフトのせいらしい。今朝こっそり聞けたが、異能のレベルアップで意識が飛ぶことが実はちょくちょくあるそうだ。


 それをピデット君やシャミー君には言えない。秘密を知っているサイラ君は黙っているようだし、私からも言えないもの。


 だけど、姫様を心配している気持ちは汲んであげたい。


 それに、異性とは言え、私を頼ってくれるのが嬉しかった。



「……わかった。材料のツルとか木の実は?」


「俺があまりものを、筆頭からもらって来たんだ! 四人で良いリース作るって話たら、遠慮なく使えって!」


「リボンとかは俺が長からもらってきたでー?」


「接着のノリとかは俺が」


「じゃ、やろう」



 ラスティさんにきちんと許可を取ってから、作業小屋に三人を招き入れて。


 ツルは男の子三人で協力して、リースの丸の形にしてもらい。


 ピデット君が持ってきた木の実に、色を塗ったり乾かしたりしてからリボンを巻いてみたり配置を決めて。


 その後に、サイラ君が持ってきた強力な接着用のノリを使って、リースの本体に貼り付けて。出来上がったら、なんといつのまにかいたウルクル様に祝福のまじないをかけていただけのだった。



『主らの願いがこもった品じゃ。はよ、姫のところに届けてあげよ』


「「「「はい!!」」」」



 片付けをしてから、少々汚れたのでそれぞれ着替えてから集合して姫様の部屋に向かい。起きてるかなと思っていたら、姫様の部屋から誰かが出てきた。


 マックス様やメイミーさんじゃなくて、綺麗な女の人。


 綺麗なクリーム色に近い金髪を見ても、誰だったか思い出せない。その人は旦那様の執務室がある方へ行ってしまった。



「……シャルロッテ様やで」


「「「シャルロッテ様??」」」


「シュライゼン殿下の婚約者様や」



 さすがは、執事見習い。よく知っているな、と感心した。


 つまりは、姫様にとっては将来のお義姉様になる方。まだ姫様はそのことを知らないだろうけど。交流があったんだな、と。友達ではないだろうけど、仲の良い貴族の女性がいたんだ。


 ちょっと寂しい気持ちになったけど、マックス様以外で『友達』は私だけだ。


 姫様の友達だなんて畏れ多いことだけど、そこは胸を張らなきゃ!


 とりあえず、姫様の部屋の前に立って、私が代表してノックをした。



「はい?」


「チャロナちゃん、エピアだけど」


「エピアちゃん!」



 起きていて大丈夫だったらしく、扉を開けたら寝間着じゃない服装で立っていた。


 で、私以外にも三人がいたので目を丸くされた。



「「よ!」」


「見舞いに来たで?」


「わぁ、ありがとう! 全然大丈夫なんだけど」


「何言ってんのさ? 昨日俺びっくりしたんだよ? マックス様に抱えられながら帰ってきたんだし」


「あ……うん」


「えとね……?」



 とりあえず、完成したリースを渡せば、目を輝かせてくださった。



「俺ら四人で作ったんだぜ?」


「花冠やと傷むからなあ?」


「ほんと……ありがとう」


『でふぅうううう!!』



 喜んでもらえてよかった。


 後ろから来たロティちゃんは、また大きくなっていたんだけど。


 聞こうとする前に、全員のお腹が鳴ってしまったので。


 食べるのも忘れていたので、全員で食堂に行くことになった。


 手作りで、素朴なリースだけど。お屋敷から離れることになっても、持っていて欲しいなと思った。

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