148-3.再びハグされた






 *・*・*









 私の頭がこんがらがっていると、女の子の神様はまたにっこり笑ったのだった。



「もう少し、よ。もう少し」



 そして、男の子の神様から離れて、いつのまにか私の目の前にやってきていた。



「もう……少し?」


「そう。君の将来。この世界の将来。あと少しで決まるわ」


「私……と、この世界?」


「うん。君の選択次第で、この世界の未来も変わるわ」



 だから、覚悟しててね? と女の子の神様が言った途端。


 目の前がフラッシュをたいたかのように眩しく光り出して。


 気づいたら、手を誰かに強く握られていたので目が覚めた。


 ゆっくりとまぶたを開ければ、スミレ色の瞳と髪が目に飛び込んできた。



「……か……い、る……さま?」


「チャロナ!?」


「チーちゃん!?」



 カイルキア様が側にいてくださったのにも驚いたが、悠花ゆうかさんもいたらしい。


 けど、それよりも。


 また、いきなりカイルキア様に抱きしめられたんですけどぉ!?



「か、かかか、カイル様!?」


「気分は? 大丈夫か!?」


「だだだ、大丈夫……です!!」


「とりあえず、離してやれカイル」



 びっくりして硬直してる私から、悠花さんがカイルキア様を離してくれた。離れてから、カイルキア様も恥ずかしくなったのか。前みたいに顔真っ赤。


 食事以外で表情変わるなんて、やっぱり貴重だ!


 どうして抱きついてきたかまではわかんないけど。



「え……っと?」



 魔法の訓練で、いつもの草原にいたはずが。今は自室。


 悠花さんが連れ帰ってくれたんだろうけど。


 何してたっけ? とすぐに思い出せない。


 ロティが見当たらないな、と横を見れば。



『おにゃかいっぱいでふぅうう』



 と、眠っているのはいいけど。


 姿が、大きさが。


 二歳児から三歳児に。


 髪も伸びて、少しウェーブがかかっていて。


 またまた手足がすらりと伸びていた。顔つきもしっかりしている。


 これをレイ君が見たら、と思っていると。近くでばたんと何かが倒れる音がした。



『ろ……ロティ、ロティぃいい!?』



 既に時遅し。


 ばっちり見ちゃったので、惚れ直しちゃったみたいだ。



「……あの馬鹿は放っておいて。チーちゃん、ほんとに大丈夫? クロワッサン食べて、多分レベルアップしたんだろうけど。全然起きなかったのよ?」


「え、そーなの?」


「覚えてない?」


「う、うーん?…………あ、食べてたね?」



 気を失って? いた時の記憶なんかはさっぱり覚えてないけど。


 何かあったっけ? と思い返しても全然だった。


 すると、カイルキア様が大きく息を吐いた。



「何もなかったなら、いい。だが、ここ最近の不調も踏まえて、明日も休め。メイミー達にも伝えておく」


「え、でも」



 パン作りもだけど、マナーのレッスンだってまだまだなのに。


 それが顔に出ていたのか、カイルキア様からはいつも通りに頭を撫でていただいた。



「無茶をしては元も子もない。とにかく休むんだ」


「……はい」



 雇い主である旦那様に言われては仕方がないので、しゅんとしているともう一度頭を撫でていただけた。


 私、って現金。


 すぐにガッカリしてたのが、ホワホワしちゃうんだから!



「マックス、また何かあれば言ってくれ」


「おう」



 と言うことで、カイルキア様は帰られました。



「…………」


「……チーちゃん? 言いたいことは?」


「……レベルアップ目前だったって。言うの遅くなってすみませんでした」


「わかってるなら、よろしい!!」



 で、思いっきりぎゅーって抱きつかれたけど、心配かけちゃったんだから苦しいと言うまで抱きつかれてた。



『ふぁはひゅー?』



 そして、ロティも起きたのでぎゅーっと抱きしめてあげたら、ロティはキャッキャとはしゃいでくれた。



「ロティ、多分ロティもレベルアップしたんだよね?」


『でひゅー! 【瞬間解凍】と【瞬間保温】が出来るようになったでふ!』


『「「どゆこと??」」』


『えっちょ。カチカチに凍らせりゅんじゃにゃくて、ご主人様の望む温度に。生地とかを調整出来るんでふ』


「……それ便利?」


「やってみないとわかんないね?」


『ロティぃいいい、起きてくれてよかったでやんすぅうう!!』


『でふ!!』



 とりあえず、レイ君がロティにハグしにいったんだけど。


 どう見ても、兄妹にしか見えなかった。

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