147-1.充実している日々






 *・*・*










 マナーのレッスンって、なんでこんなにも大変なんだろう。


 以前の授賞式のために、付け焼き刃とは言え、なんとか叩き込まれて。


 それでも頑張って頑張って、粗相はなかったように思うが。


 今度は違う。


 お城で行われる式典。


 なので、毎日少しずつだが、メイミーさんを筆頭に行儀作法を叩き込まれて。


 今日も今日とて、体がひーひー言うくらい酷使させられて。


 ただいま、午前11時。


 私、チャロナ=マンシェリーは自室のベッドで倒れ込んでおります。



「……痛い痛い痛い、いーたーいーー!?」


治癒ヒールかけまふ? レクターのおにーしゃん呼びまふ?』


「う、うーん。……ごめん、先生呼んできてぇ」


『あいでふぅう!』



 ロティの魔法が効かないわけじゃないけれど。まだまだ赤ちゃん精霊だからか持続時間が短い。


 今だと、せいぜい二十分。うーん、短い。


 だもんで、ほぼ毎回レクター先生の治癒魔法にお世話になっているわけです。



「はーい、お疲れ様」



 レクター先生がやって来たら、なんとかベッドから起き上がって端に座るのもいつもの事です。


 そうすると、先生も苦笑いするのも。



「姉さん、相変わらずスパルタ?」


「スパルタのスパルタですぅ〜〜……お貴族様って大変なんですね〜……」


「まあ、チャロナちゃんは貴族じゃなくても。それに筆頭するくらいの功績はあるからね?」


「頑張ります〜〜」



 何せ、シュライゼン様が持ち帰ったのを国王陛下に食べてもらったのがきっかけなんだから。


 それで認められたのもあるが、私に元から拒否権はない。元々アインズさんにはパンのことを頼まれていたから、それは使命だと思って受け止めてはいたけども。


 だけど、式典は。


 凄すぎやしないだろうか?


 とりあえず、先生には筋肉痛などのダメージ緩和を促す治癒魔法をかけていただきました。


 終わったら、スッキリ爽快!



「午後からの魔法訓練に向けて、頑張ります!」


「あんまり、根を詰め過ぎないようにね?」


「先生の治癒魔法のお陰で、大丈夫です!」


「まあ、僕は仕事だからだけど。チャロナちゃんは普通の女の子なんだから」


「ありがとうございます」



 で、午後は二時間程度。悠花ゆうかさんとレイ君達と一緒に魔法訓練。


 主に、最初と同じバトル訓練ばっかりだけど。


 超すんごいSSランク冒険者からのマンツーマン指導だもの。贅沢は言ってられない。


 それに。



(記憶とかが戻る前に比べたら、とっても充実してるもの)




 パン作りもだし。


 魔法訓練もだし。


 恋愛はともかく、家事手伝い以外役に立たなかったチャロナ自分が嘘のように見違えてしまったのだ。


 マブダチも友達も出来たんだから、今が一番楽しい。



「うーん。もう少しでレベルアップするから」



 全部のスケジュールが終わり、寝る前にステータスを確認してコロンを振り分けるのもいつものこと。


 あと数十万でレベルアップ出来るから、PTが稼ぎやすいパンにした方がいいかもしれない。


 今日は、料理人としての作業はおやすみだったので。


 パン作りもおやすみ。シェトラスさん達にはまだまだ発酵の練習をしてもらっている最中だ。


 少し涼しくなってきたので、湿度の低い常温だとどこまで出来るか。もちろん、個人的に練習されていることは止めない。大事なことだからね?



「ロティ、食べたいパンとかある?」



 ちょっとおねむだったロティに聞くと、ロティはぱあっと顔を輝かせた。



デニッシュでにっちゅ食べちゃいでふううう!』


「デニッシュ?」


『ふわふわクロワッサンぅう!  チョコクロワッサンぅうでふうう!!』


「チョコクロワッサンかあ?」



 カイルキア様はチョコが大好きだから、いいかもしれない。もちろん、ロティの希望もあるので。


 明日朝イチにシェトラスさんに提案しようと決めた。

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