144-2.友達(エピア視点)
*・*・*(エピア視点)
まだたったの二ヶ月なのに、サイラ君と恋人になるきっかけから随分と経っている気がする。
それくらい、あの方は凄い。
あの時の豹変ぷりには驚いたけど、その事件がなければサイラ君から言われることはなかった。
だから、結ばれることもなかった。姫様は恩人だけど、今は友達。
友達だなんて恐れ多いけれど、あの方はまだ御自分の本当の身分を知らないでいる。
何故そんなことにしているかはわからないけど。旦那様のご意志があるのなら、下っ端の私がとやかく言えないもの。
とりあえず、私が出来ることは。
姫様のために、美味しい食材を作ることだけだ。
「よ……し」
アズキの収穫を終えたところで、水筒の水を飲む。
夏はほとんど終わっているが、まだまだ暑い。帽子もかぶっているし、この前のような熱中症になることもなくなった。
姫様はパン作りで結構忙しくなったので、最近はあまりこちらには来られない。
姫様だけしか持っていない
それが、あれだけ美味しいパンや料理になるのだから、私もだが皆夢中になって食べてしまう。
私の中で、チーズの次に『アンコ』が好きになるくらい。
昨日のアンコとバターのサンドイッチは本当に美味しかった。
「エピア〜? 休憩するよ〜?」
「は〜い!」
ほとんど二人しかいない菜園では、私と叔父さんのラスティさんだけ。
姫様がこのお屋敷にいらっしゃってからは、時々ウルクル様もお手伝いしていただけるのだ。
今日もそんな日だったわけで。
『ほっほ。精が出るのお?』
相変わらず、妖しくも子供の姿で降りてこられた。仕事が終わったら、叔父さんに抱きついていたけど。
「み〜んな、お疲れ様〜」
『お主もよ、ラスティ?』
「僕は平気だよ〜?」
「叔父さん、ダメだよ。いくら、ウルクル様の加護があっても。身体はまだ人間なんだから」
「あは〜? そうだね〜?」
休憩時間や、仕事以外だと私とラスティさんは姪と叔父の関係になる。
早くに村を出た叔父さんは、しばらくしたらウルクル様の将来の旦那さんになることが決まったと言いにきた時は。家族全員で驚いたものだ。就職先も、公爵家の菜園管理だと言うことも。
だから、私は村でのこともあったので、この人を頼ったわけだ。叔父さんも快く受け入れてくれたし。
ガチガチだったけど、面接も受かったし。
「あ、いたいたー!」
『でふぅううううう!!』
姫様とロティちゃんが来た。
どうしたのかな? と思っていると、私達の前に来たら息を弾ませていた。
「定例会用の試作ですけど。おやつにミニハンバーガーというものを作ったんです!」
「『「ハンバーガー??」』」
「私の前世では、人気のサンドイッチのことです。小さいんで、いろんな味を用意しました!」
『ほほう? それは気になる』
「エピアちゃん、チーズもあるよ!」
「ほんと!?」
この方は、異能だけでなく前世の知識などを惜しみなく私達に披露してくださる。
あと少し、で。お城でこの方のための式典があるそうだが。
もう、お別れの時間が迫っているのだろうか?
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