134-4.あの子のために(???視点)
*・*・*(???視点)
ああ、あの子の心の声が聞こえる。
寂しい。
淋しい。
哀しい、と。
けれど、今の私では何も出来ない。
この場から動けない。
器も何もない、魂の存在だから。
以前、幾度かあの子の夢の中には潜り込んだけれど、それは神の思し召しだから。私の意思ではない。
だが、その神のご意向であの子は淋しい思いをしている。忘れさせられてはいるが、神の決断を受け入れて、あの子は淋しい思いを殺して笑っているのだ。
そんな生き方をして欲しくなかったのに、結果的には強固派のせいで城には戻れない。
あの時、私が命の灯火を終えようとした時に、願った『我が娘』の行く末を示してほしいと神に伝えたはずが。
我が甥に助けられて、神の祝福である
そして、使用人として生き生きとパン作りをしているのを覗くと、私は少し複雑だった。
孤児として、私の乳母だったマザーに預けられたからこそ、生きることへの強さを学んだけれど。最終的には、あの子は王女だ。
それを知った時、あの子はどんな選択をするのかわからない。
甥に好意を持っているのはすぐにわかったが、身分差とかで諦めかけている。その憂いをはらいたいのに、神のご意向で出来ずじまい。
甥も願っているのに、その状況を受け入れるしか出来ないでいる。
何故、我が子達がそのような苦難を強いられるのだろうか?
「……あなたが思うより、ずっと困難だったのよ」
目を閉じていても、思考は動いていた私に。神のお一人が声を掛けてくださった。
「あなたではないけれど、あなた達人間が犯した【枯渇の悪食】は罪深いわ。その根源はあなたの国、セルディアス。実際はソーウェンとかが仕組んでも、史実としてはセルディアスとなった。その罪を償うには、あなたの娘しかいないの」
少ししわがれた、女性の声。
私が命の灯火を終える直前に、願いを聞き届けてくださった女神の声と同じ。
今、私が魂の形であの子とあの子の精霊を繋いでいるから。
こうして、語りかけてくださっているのだろう。
しかし、ここ十五年程度は思考すら出来なかったのに、それが可能となったと言うことは。
近い、のだろうか。
あの子の選択の時が。
「ええ、近いわ。そして、神の方でも色々準備があるの。
アクシア、と女神が告げてくださった時に。
私は今、生前の姿で卵のような中にいるのが自分でもわかったのだ。
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