132-1.大豆と交換条件






 *・*・*









 そして翌日。


 だいたいおやつの前くらいに、フィルドさん達がやって来るので。豆乳のプリンアラモードはギリギリで仕上げればいい。


 朝、昼のパンの仕込みを終わらせたら。ヌーガスさんが、いいものを持って来てくださったのだ!!



「チャロナ!! 料理長から聞いたよ!! あんたが欲しいもんは持って来れなかったけど、魔法鳥でレシピは届けてもらったよ!!」



 と、お昼の提供が終わった時に、ヌーガスさんが数枚の紙を持って来てくれたのだ。



「わ! なんですか??」


「豆の乳だよ。うちの地元はダイズが特産だから色々作ってんだけど。よく知ってたね? あんまり他所じゃ知られてないのに?」


「あ、ははは……冒険者だった時に、ちょっと」


「あ、なるほどさね?」



 転生者だから、云々とは言えないので適当に誤魔化すしかない。


 とりあえず、ヌーガスさんから渡された豆乳のレシピを見ると。





『豆乳の作り方』



 ・ダイズ……500g


 ・水(1.8リットルくらい)





 ①綺麗な水で洗浄してから、夏場は10時間。冬なら16時間ほど浸けて三倍の大きさになるまで膨らませる



 ②ざるで水気をとり、麻袋などに入れて上から棒などで叩いて粉々にする



 ③出来上がったら、ボウルなどに入れて分量の水の半分くらいとよく合わせる



 ④鍋に残りの水と一緒に入れて、焦げ付かないようにかき混ぜながら火にかける(沸騰したら弱火)



 ⑤清潔な布などに入れて、濾す



 ⑥ざると布の中に残ったものは、オカラ。絞ったのは豆の乳





 分量などは、多分私の『幸福の錬金術ハッピー・クッキング』とかが視覚を変換してくれたんだろうけど。


 破砕の部分は、多分ロティのフードプロセッサーよりミキサーで出来るから。うまくいくと思う。


 ただし。



「あの、ヌーガスさん。大豆ってほんの少しでも取り寄せることは出来ますか??」


「うーん。そうだね?……あんたの、味噌のうまい使い方をあいつらにちょっとだけでも教えてやれたら、いいと思うんだけど」


「レシピをですか??」


「味噌汁以外の方法があるって、うっかり話しちまってね? だったら、教えてくれってこのレシピと一緒にうるさく書いて来ちゃったんだよ」


「……なるほど」



 なら、夏も終わりに近いし。夏野菜とかを有効に活用出来るんなら。


 お酒のアテにもなる『アレ』をお教えしましょう!!


 全然難しくないし!!


 なので、シェトラスさんに許可をいただいてからヌーガスさんに厨房に入ってもらいました。



「何を作るんだい??」


「味噌を手軽に楽しめる、おつまみです」


「つまみか!?」


「おやつにならなくもないですけどね?」



 材料はシンプル。味噌とマヨネーズを適量混ぜて。


 きゅうりは棒状にカット。


 以上。



「これだけ……?」


「まあまあ、騙されたと思って。きゅうりをソースに少しつけてから食べてみてください」


「じゃあ……」



 味噌マヨディップをきゅうりにちょんちょんとつけて、ヌーガスさんは豪快にひと口。


 しゃくっといい音が立ったら、ヌーガスさんの目がカッと見開いた。



『でふ?』


「……うまい。うまいじゃないか!? なんなんだい!? 味噌とマヨネーズ混ぜただけなのに!?」


「ちょこっと味付け変えたら、色々出来るんですよ?」


「かあ!? こりゃ、サラダで食える野菜にならなんでも合いそうだねえ!?」


「あ、セロリでも出来ます」


「……いいこと聞いたねえ?」



 セロリはヌーガスさんの大好物だからです。



「とりあえず。味噌煮は手間がかかるので、手軽にならこういうのかなと」


「いやあ! いいよ!! 地元の奴ら、面倒くさがりが多くてねぇ? これくらいなら誰でも出来るし」


「お役に立てて良かったです」



 それで大豆を交換出来るなら、お安い御用ですとも。


 ただ、おやつの時間にフィルドさん達がやって来たんだけど。先に大豆とご対面することになってしまった。

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