129-1.第四回孤児院定例会






 *・*・*









 今回で四回目になった、孤児院への差し入れ定例会。


 孤児院に入ったら、まず小学校低学年くらいの男女の子供達に囲まれて。


 今日は何? 美味しいもの? と質問されまくったので。院長先生のマザー・ライアから静かな雷を落とされたので、子供達は大人しくなっちゃった。



「今日はちょっと中身が違うカレーパンと、揚げパンと言うのを作ってきました!」


「「「「「カレーパン!?」」」」」


「辛さは以前出したのと同じなので、辛いのが苦手な人でも食べられると思います」


「「「「「わーい!!」」」」」



 そうして、マザーや職員さん達と子供達の前に配って。


 子供達はマザーに従って、簡単なお祈りをしてから。ほとんどの子達がカレーパンの包み紙を手に取ったのだ。



「「「「「なにこれ!?」」」」」


「コリコリしたのとか……あ、えび? あと柔らかいけど、美味しいのが入ってる!!」



 食リポをしてくれたのは、ケーミィちゃんだった。



「今回のカレーパンはシーフードカレーパンと言います。シーフードと言うのが、異国で魚とか貝を意味しているので取り入れてみました。どうですか?」


『美味しいです!!』


「それはよかった」



 事前にマザー・ライアからアレルギーに似た症状が出ていないのを確認してから作ったけど。喜んでもらえて何よりだ。


 揚げパンの方は、シンプルにグラニュー糖たっぷりの。こっちも、同じくらい子供達の口に合ったようだった。



「お姉さん!」



 片付けをお手伝いしようとしたら、ケーミィちゃんがターニャちゃんとクラット君を連れてやってきた。



「? どうしたの?」


「あの! カレーパンにお魚って入れられますか!?」


「お魚??」


「お姉さんが言ってたじゃん! 魚とか入れたって。けど、今日のには入ってなかったし……」


「ああ!!」



 たしかに、シーフードの説明で大雑把に言ったけど。実際魚の切り身とかは入れていない。だから、ケーミィちゃん達は気になったのだろう。



「ど、どうですか?」


「そうね? けど、普通に調理しちゃうと。魚とかはポロポロになっちゃうの。だから、前にシュライゼン様から教わったって聞いた……魚のフライをパンに包むのなら出来るわ」



 かと言って、カレーライスじゃないからそう言うトッピングが合うかは微妙だけど。


 でも一度、挑戦してみるのもいいかもしれない。



「「「お魚のフライ……!!」」」



 そして、白身魚のフライが好物になったらしい三人からは、ヨダレが出そうになっていた。



「次回に出来るかわかんないけど。カレー風味のパンになるかもしれないわ。それでもいいかしら?」


「「「はい!!」」」


「じゃ、今日は簡単に手に入る食材で作れるお菓子を作るよ?」


「「「わーい!!」」」



 納得したので、三人は準備のために行ってしまったが。


 入れ替わりで、ひとり、人形を抱えた女の子がやってきた。



「どうしたの……?」


「……お姉さん」


「うん?」


「……お姉さん!」


「えええ??」



 女の子がいきなり私に抱きついてきて。


 しかも、泣きじゃくってしまった。これには驚くしか出来なかった。

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