121-1.苦悩のコルセット






 *・*・*









 翌日。


 今日は朝の仕事だけをしたら、メイミーさん主催のマナーレッスンをエイマーさんと受けることになったのだけども。


 何故か、今は私の部屋でエイマーさんとお着替えに格闘しているのだった。



「んぎぎぎぎ!?」


「ふんぬ!?」


「はーい、エイマー先輩もチャロナちゃんも力まない。リラックス〜」


「む、無茶を言うな!?」


「ぐるじいですぅ〜〜!?」


『頑張るでふ、ご主人様ぁ!』



 今は。


 メイドの皆さんが手伝ってくださってくれてるんだけど。ドレスの下着の代表格である、コルセットを着用させられているのだ。


 エイマーさんはナイスバディなので、胸が。


 私は腰回りの肉が……肉が少々邪魔で苦しい。


 それでも、ベテランのメイドの皆さんのお陰でなんとか着用は出来たのだった。体感で一時間は掛かったんじゃとは思ったけども。


 終わった頃には、エイマーさん共々、コルセット姿のまま絨毯の上に倒れ込んだのだった。



「……話だけは聞いていたが。こんなにも苦しいのか」


「先輩は伯爵夫人になられるんですから、社交界の時は毎回着なくてはいけませんよ?」


「く! 身分だけならメイミーの方が上だろうに!」


「今は関係ありません」


「うう……」



 吐き気まではないが、腰をキツく締め上げられているために骨盤が悲鳴を上げている!?


 私はお貴族じゃないにしても、授賞を受けたし。貴族階級くらいの身分を持ったと言うことで巻き込まれてしまったのだ。


 社交界に出るかまではわかんないけども、お貴族様も努力なさっているんだなと実感。アイリーン様やシャルロッテ様は平然としてたのにすごいなとしか思わずにいられない。


 しかも、次はドレス着用してからダンスレッスンだって!?



「チャロナちゃん〜? 逃げようと思っちゃダメよ?」


「ぴ!?」


「いつ、王城に呼ばれるかもわかんないんだから。ダンスのマナーを最低限覚えなきゃ」


「な、なんでお城に!?」


「お城から勲章を授与されたのよ? 場所はここだけど」


「ぴぇえええええ!?」


「さあ、綺麗にしましょう! 着替えてからメイクもひと通りするわよ、皆!」


「「「「はい、メイド長!!」」」」



 と言うわけで、見事に正装させられてしまい。ダンスレッスンの相手は気心しれているからと、執事バトラー見習いのシャミー君となった。



「チャロナちゃん、よろしゅう〜」


「う、うう……。足踏んだらごめんね?」


「かまへんかまへん。最初はしゃーないって」


「ありがとう……」



 そして、エイマーさんの方は何故か正装した悠花ゆうかさんがやってきて。思いっきり男モードで口説いていたのを、メイミーさんのメイスで叩きのめされていたのでした。



「なんでよ!? 綺麗な婚約者を褒めちぎって悪いことないでしょ!?」


「そうですけど。今からダンスの練習なんですよ? 先輩を余計に緊張させてどうするんですか!!」


「ちぇ」



 本当に、好きな相手だからとことん褒めたいもんね?


 私も、一度だけカイルキア様と踊ったりはしたけど……あの時はいっぱいいっぱいだったから必死だった。その点、シャミー君には緊張しないし、関西弁鈍りな方言口調だから安心出来る。


 私は関西人じゃないけど、前世のお母さんがそうだったから。お母さん……元気にしてるかなあ?


 私は向こうじゃ、もう死んでるだろうから二度と会えないもん。あまね千里ちさとはチャロナ=マンシェリーに憑依はしていないと思うからね?


 憶測だけど、記憶が蘇ったあの衝撃がなければ今はないから。


 とりあえず、ダンスを始める前にペアにそれぞれお辞儀するところから始まった。

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