119-4.共有③
*・*・*
で、カイルキア様の執務室に着いたわけですが。
「……エスメラルダに追求されて、話したのか」
「は、はい」
正直に全部話すと、カイルキア様は大袈裟なくらいにため息を吐いてしまった。
(お、怒られる!?)
心配をかけたことはいっぱいあるが、このお屋敷に来てからまだ怒られたことはない。
人生初、好きな人に怒られるのか! と、身構えていたら、隣に立っていたエスメラルダさんから肩をぽんぽんと叩かれた。
「旦那様。誰だって、不注意はありますよ? 今回はあたいが気づいたから聞き出したことです。責めるなら、あたいを責めてください」
「え、エスメラルダさん!」
「……たしかに。落ち度はチャロナにもあるが、お前が聞き出さねば話さなかったな?」
「はい。それに、あたいもサイラも言いふらしはしません。このような重大な秘密……国家機密に匹敵するでしょうし」
「……そう思ってくれ」
と言うことで、報告は無事に終わったが。
部屋の隅にいた
「だったら、あたしの秘密もついでに教えちゃう!」
「あんたの?」
「マックスさんの?」
「あたしも、転生者なのよ〜! しかも、前世は女」
「「だから、その口調!?」」
「けど、安心してよ? エイマーと結婚するのは本気」
「それはそうであってくれよ!」
ついで、とばかり。自分の秘密も話してくれて、私が普段は悠花さんと呼んでることも教えたのだった。
「……なにこれ。濃い内容過ぎ」
「俺もっす。エスメラルダさん……」
「知っちゃったんだから、これくらい受け入れなさぁい?」
「「誰のせいだと!!」」
「うふふ〜〜」
「とりあえず、だ」
カイルキア様がまた大きくため息を吐いてから、こちらに向き直った。
「チャロナのこともだが、マックスのことも出来る限り秘匿にしてくれ。あと知っているのは、レクターやメイミー以外だとシュライゼンにカイザーク殿だ。俺の両親も……一応は知っている」
「「外に持ち出しません」」
「是非そうしてくれ」
と言うことで、話は無事に終わり。
悠花さんから、なんでバレたかの内容を改めて話せば。ラザニアの話題で盛り上がったのだった。
「んま! ラザニア!? しかも今日はパンで代用!?」
「うん。試食したけど、PTが凄かったの」
「それは、本物だったら大変だわねぇ?」
「「ポイント??」」
「この子の場合、
「他にも色々あるんですけども」
「へー? 他人には聞こえないのかい?」
「今のところ、そうですね?」
で、執務室を出る前に、カイルキア様にはエピアちゃんとラスティさんにも打ち明けていいか相談しました。
ウルクル様には筒抜けだったし、ラスティさんにはもしや……と思っても、これからも調理関係に関わる人達には伝えたい。
すると、カイルキア様はあっさりと頷いたのだった。
「まあ。勘付いてはいるだろう。あの二人になら、許可する」
「あ、ありがとうございます!」
「じゃ、チャロナ! 今から言いに行こうぜ!」
「あたいもラスティに確認を取りたいし、行くさね?」
「んじゃ、あたしも〜」
「お前はここにいろ。大所帯になり過ぎだ」
「ちぇ」
と言うわけで、一度厨房に寄ってから事情をシェトラスさん達にも説明して。
お昼寝から起きた、ロティも連れて菜園に向かったのでした。
「チャロナちゃんが……?」
「へ〜? 転生者?」
お知らせすると、二人も最初は驚いていたけど。思ったよりは追求してこなかった。
「エピアちゃん、気づいてた?」
「う、うん。異能のことだけは聞いてたし、それなら転生してても不思議じゃないかなって」
「そっか」
けど、黙っててごめんの意味を込めて、ロティと一緒にぎゅ〜っと抱きついたのだった。
「あれだけ色んなお料理を知ってたのは〜、前世の知識〜?」
「はい。パン作りなども、ほとんどの料理も。この世界よりも前世での経験がほとんどです」
「そっか〜」
ラスティさんの質問に答えると、空が一瞬緑に光り、消えたらウルクル様が降りてきたのだった。
『心配する必要はなかったであろう?』
「ウルクル様!」
『でふぅ!』
『そして、妾が代弁するのはロティのことよの? 魔力溜まりから発生しない、チャロナのためだけの精霊じゃ。そして、異能の力で様々な魔導具に変化出来る』
「「「「ロティ(ちゃん)が??」」」」
『機会はそれぞれで作れ。ここだと目立つからの?』
『にゅ!』
自分のうっかりで秘密の共有者は増えたけれど。
皆さん、とってもいい人ばかりだから本当に嬉しかった!
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