118-2.揚げパン絶賛!②(シュライゼン視点)







 *・*・*(シュライゼン視点)








 翌日、俺は転移で再びホムラ皇国のシュリ城へとやってきた。今度はシュィリンではなく、爺やのカイザークを伴って。


 事前に魔法鳥で伝達はしてあるし、昨日も俺は食べまくったけど。チャロナマンシェリーの美味しい揚げパンを、魔法鞄マジックバックに大量に持ってきたんだぞ!


 あと、俺と爺やに、エリザベート殿が作った白パンも!


 マンシェリーの指導のお陰で、随分と美味しく出来たんだぞ!


 これには、アシュリンも驚くだろう。


 と言うか、前回の米に引き続き驚くだけで済まないと思う! 


 だって、【枯渇の悪食】のせいで世界中のほとんどが美味しく無くなってしまった主食が。


 転生者と言う理由と元職人だったおかげで、とってもとっても美味しく作れるようになったんだぞ。これは前回アシュリンには伝えたが、食べさせるのは初めてだからね?



「……来たか」



 と思っていたら、前回とは違って皇太子自らが門まで出迎えに来てくれたんだぞ?


 今回は、シュィリンを同行させていないことも伝えてはいるはずなのに?



「どうしたんだぞ?」


「なに。父上に迎えに行けと言われたまでだ。お前の妹君のパンはどんなものなのか、気になって仕方がなかったらしい」


「うむ! その期待には大いに応えれる逸品なんだぞ?」


「なら、行こう」


「皇太子殿下、お久しゅうございます」


「ああ、久しいな。カイザーク宰相」



 挨拶も終わり、俺達は皇帝陛下のいる部屋へと向かう。到着すれば、爺やは皇帝陛下に最敬礼したんだぞ。



「お久しぶりだね? よくいらっしゃった」


「陛下、早速お出ししますね?」


「ああ、王太子殿下。頼んだよ?」



 あえて、給仕もいないように手配してもらったので、俺達だけしかいない。


 爺やにも手伝ってもらい、事前に切り分けておいたコッペパンサンドや揚げパンを仕分けた。



「……俺が知ってるどのパンとも違う?」


「そうだね、アシュリン? 私も見たことがない」


「クリームとかを挟んであるのが、コッペパンサンドって言うもので。砂糖とががまぶしてあるのが揚げパンと言うものなんだぞ!」


「丸いパンは、僭越ながら私めや殿下が手掛けたものです。姫様から味は大丈夫と保証はいただきました」


「ほう! 殿下達はもう技術をモノにしたのかな?」


「いいえ。まだまだなんだぞ」



 とりあえず、食べてもらうことになり。手掴みで取ってもらってから、二人は少しコッペパンサンドを見ていたが。手触りが今までのパンとは違うのに、ほっぺを真っ赤にさせてしまったんだぞ。



「柔らかい!」


「小麦のいい香りもするねぇ? これは期待出来そうだ」



 で、パクッと二人とも頬張れば、さらに顔を赤くしたんだぞ!



「ふ、ふま!?」


「これは素晴らしい! 柔らかく、ほのかに甘く。小麦の香りが鼻から抜けていくようで、ちっともむせない! 以前にセルディアスでいただいた時のが霞んでしまうほどだ!」


「この少し辛いのはなんだ、シュラ!? 茶色いし、赤が主流の我が国とは全然違う!!」


「ふっふっふ、それはカレーと言う料理なんだぞ!」



 俺達も食べながら、コッペパンサンドをひと通り堪能した後。次に、揚げパンに行く前に俺と爺やが手掛けた丸パンを口にしてもらったが。



「美味い!」


「……美味しい。さっきいただいたコッペパン達とも、ほとんど差がないよ」



 俺と爺やはほっと出来、二人はバターとジャムでペロリと食べてくれたんだぞ。


 事前に食べてはいたが、やっぱり普段からあまりパンを食べない人間にも美味しいと言われるかわからないからね?


 んで、最後に揚げパンなんだぞ!



「最初に召し上がっていたいたコッペパンサンドのパンを、表面だけ揚げてから砂糖やココアをかけたりしたパンなんだ」


「それは、シュラ。あれか? お前の国などであったドーナツ? と言うものか?」


「ふふん! 部類は近いが、マンシェリーのは全然違うんだぞ!」



 とりあえず、手が汚れやすいので紙に包んでもらってから食べてもらえば。


 ひと口食べたアシュリンにとっては、好みの味付けだったのかガツガツと食べ続けたんだぞ!



「う、美味い!! あのドーナツと全然違う!? カリカリしてるし、中は柔らかい!? 表面だけ甘いがその分中の味と喧嘩しない!!」


「うん、これはいいね? 饅頭よりも甘くなくて。汚れやすいのが欠点だけど」


「今回は切り分けましたが。マンシェリーの前世では長細いパンを丸々一本揚げたものをそう言うらしいです」


「!? 丸ごと!?」


「ふふ、面白いねぇ?」


「で、ひとつ陛下方にお聞きしたいのですが」


「うん?」


「なんだ?」


「マッチャ、と言う緑の粉茶をご存知ですか?」



 マンシェリーが欲しいと言っていた食材。


 孤児院とは言え、ホムラで育った彼女が知らないのであれば、皇室ではどうか。


 今回はそれも確認しに来たんだぞ!


 すると、二人とも顔を渋くしたのだった。



「……神事の時にしか飲まない、甘くない茶か?」


「あまり他国でも知られていないのだが。殿下、それも姫君の前世では同じようなものが?」


「うむ! この揚げパンには合うらしいんだぞ!」


「「……ええ??」」



 それだけ美味しくない茶なのか。俺もちょっとどんな茶なのか想像しにくいんだぞ。


 けれど、皇帝陛下は、今回パンを持参してくれたのだから、土産代わりに特別に持たせてやると手配してくれたのだった。



「姫君の生誕の儀まであと少しだが、一度正式にご挨拶願いたいね? ほら、こちらでの饅頭の指導もお願いするから」


「予定を組み込んでおくんだぞ!」



 それくらいはお安い御用だが、マンシェリーはきっと卒倒しかけると思うんだぞ。何せ、育った国の皇帝であり、シュィリンの叔父上だからね?


 とりあえず、会合が終わってから俺と爺やは転移でカイルの屋敷に向かったんだぞ! 


 マンシェリーは、ちょうどおやつを作ってたらしく、マッチャを渡すついでに俺達もご馳走になった。


 あれだけ食べたのに、は関係ない。別腹なんだぞ!

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