117-3.仲直りのフレンチトースト






 *・*・*









 エピアちゃんや、サイラ君が来ない。


 今日のおやつは一緒に食べようって一応約束したんだけど。おやつの時間になっても、二人ともちっともやって来ない。


 何か用事でも出来たんだろうか?


 けど、それなら二人とも事前に言いに来てくれるタイプなのに。


 もしかしたら、この猛暑で体調でも崩したんじゃ!? くらいまで考えが及んでしまった時。


 やっと、二人がやって来た。


 ただ、二人とも少し変だった。



「ど、どうしたの!?」


『でっふ!』



 サイラ君は、顎。


 エピアちゃんは頭に。


 それぞれ、この世界では定番の絆創膏代わりのガーゼとテープで治療されていたのだ。一体全体どう言うわけ?



「い、いや……」


「あのね……?」



 二人が交互に説明してくれたのは。



 ①エピアちゃんが初めてサイラ君に意見されたので、拗ねてた。


 ②今日仕事のし過ぎで熱中症になりかけて、エピアちゃんは倒れた。


 ③エピアちゃんを探してたサイラ君によって、看病されたのだが。


 ④起き上がろうとしたエピアちゃんの脳天と、サイラ君の顎が激突して怪我を負う。




「……倒れたのは驚いたけど。大事にならなくて良かったよ」


「心配かけて、ごめんね?」


「いいよ」



 代わりに、思いっきりハグはさせてもらったけどね!


 ショックを受けてたのは知ってたけど、エピアちゃんのチーズ好きにも家庭事情があったとは。


 それを知らなかったのは大多数だったし、エピアちゃんも言い難かったのは無理もない。


 ので、明日私が仕事に戻るので、チーズトーストは作ってあげることになった。



「俺、フレンチトースト頼んでくる!」


『ロティもお手伝いすりゅでふぅうう!』


「おう、行こうぜ!」



 怪我がしたけど、元気なことに変わりないので。サイラ君は元気いっぱいのロティと一緒にカウンターに行ってしまった。


 で、ちょうど焼いてたらしく。ロティの魔法で人数分浮遊させながら戻って来た。



『お待たちぇでふぅうううう!!』


「チャロナ、チャロナ! 何これ、むっちゃ美味そう!」


「……綺麗」


「ふふん! 仕込みは頑張ったよ!」



 使用人の皆さんには、今日の朝だけ提供した温め直したバケットのスライス。


 それを、前日に一晩卵液に染み込ませたのを、たっぷりのバターで焼いて。厩舎の自家製蜂蜜をこれまたたっぷりと贅沢にかけた逸品。


 絶対美味しいに決まってますとも。



「じゃあ」


『でっふ!』


「「「いただきまーす!!」」」


『いちゃだきまふぅううう!!!』



 手を合わせて、いただきます!


 食パンで作る普通のフレンチトーストより、耳の部分はしっかりしてるんだけど。一晩卵液の中に漬け込んだお陰か、ナイフですっと切れていく。


 そして、何より白い部分が金色に輝いてふかふかしている。ああ、前世で学生の頃に、友達や先輩達とわざわざ専門店に行ってまで食べたものとは違うが、懐かしい。


 もちろん、この世界に生まれて、マザー達の手作りしてくれたのも食べてはいたが。


 記憶が戻る前は美味しく感じたけれど、今思うと物足りなく感じた。卵液も満足に染み渡っていなくて、パンもべちゃべちゃ。けど、【枯渇の悪食】で失われたレシピを無理くり再現しようとした証だ。無理もない。


 けど、今は現実を堪能しなくては!


 お皿にまで広がってるたっぷりの蜂蜜を絡めてから、口に運んだ。









【PTを付与します。



『蜂蜜たっぷり、熟成フレンチトースト(バケット)』



 ・製造40人前=50000PT

 ・食事1人前=1500PT



 →合計51500PT獲得



 レシピ集にデータ化されました!






 次のレベルまであと335460PT



 】






「うっめ! 超うっめ!」


「美味しい……すっごく美味しい! お母さんのフレンチトーストよりずっと!」


『でっふぅ……でふぅううう!!』



 中はふわとろ。


 耳もとろとろ。


 けど、決して生っぽくない。


 一度教えたとは言え、シェトラスさんやエイマーさんの技術は凄い!


 もう、一流シェフの技術をモノにしているだなんて。


 これなら、カイルキア様にもきっと喜んでもらえるだろうなあ、と思っていたら。


 誰かに肩を叩かれたので、振り返ると。


 まさに、そのカイルキア様が立っていらっしゃったのだった。

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