112-2.焼きカレードリア②
「……あれ? チャロナちゃんは食べないの?」
「う、うん! ちょっと……皆さんで召し上がってください」
「わかった!」
「「即答!」」
「え、エピアちゃん。熱いから気をつけてね?」
「うん!」
本当にチーズに目がないようで、ひとり焼きカレードリアの前を陣取っていた。けど、分け合う気持ちがないわけじゃないらしく、私が小皿に取り分けてもなにも言わなかったが。
けど、チーズの伸び具合を見ると。
『「しゅご〜〜い!!」』
『チーズがかなり伸びているでやんす!』
「実に美味しそうだ」
「ええ、料理長」
ここにスプーンで潰した半熟卵の黄身をかければ完成!
「さあ、どうぞ」
「「「いただきます!!」」」
『いちゃだきまふううう!!』
『いただくでやんすぅう!』
さあ、味の予想は出来るけど。どうだろうか?
気に入ってくれると嬉しいんだけど……?
「「「!!?」」」
『でっふ、でっふぅ!!』
『う、うま!?』
美味しいものは正義。
皆さん、美味しいものには言葉よりも口に入れる速度が物語っていた。熱々はふはふしている様子もなんだか可愛いし、美味しいって言ってもらったから成功だ!
「卵? 卵がほとんど固まってないのに……チーズとよく合うよ! カレーもすっごく食べやすくなって!」
「ありがとう、エピアちゃん」
「これ、何か特別な卵……?」
「ううん。サイラ君がいつも届けてくれてるコカトリスの卵。普通のニワトリでも出来るよ?」
「こ、コツは!?」
「あんまり焼き過ぎないことかな? 今回みたいにチーズがとろける程度に焼き込めば大丈夫だよ?」
「おお!」
もしかしたら、サイラ君に作ってあげたいのかな?
こっそり聞くと、顔を真っ赤にしちゃったけど。
「ふむ。これは下準備が出来ていれば簡単だね? ただし、前提にチャロナちゃんのカレーとお米がなくては難しいけれど」
「カレーのスパイスの配合は難しいですからね?」
なんで私が出来るかと言うと、前世のパン屋で仕込まれたから。とにかく、自分達で出来ることはなんでも! がモットーの社長兼店長がこだわったわけで、当時は勤続二年目くらいの私にも修行させられたわけである。
エピアちゃんがいるので、この話は後にしよう。
『あ、あ……エピアはん!?』
「「「え?」」」
『でっふぅ?』
気づいたら、残っていた焼きカレードリアをエピアちゃんが完食してしまったらしい。この後まだ仕事があるにしても、食欲あり過ぎ! まあ、嬉しくないわけじゃないけど。
「……すみません、美味しくてつい」
「まあ。美味しかったけども……そろそろ菜園に戻りなさい? ラスティ君が心配するよ?」
「あ、はい!」
なので、エピアちゃんはごちそうさまでしたを言ってから、裏口を通って行ってしまった。
ああ、行っちゃったと少し虚しくなってきたけど。
「友達なのに……なんでも言えないのは、ちょっと辛いですね?」
「チャロナくん……」
サイラ君にもだし、同世代の友達に秘密を抱えてしまうのは、少し複雑だ。
けど、転生者って事実はさすがに受け入れにくいだろうし。そりゃ、
はやく、【枯渇の悪食】で失ったレシピを公開出来るようになりたい。
それを機に、自分の出自も一部だけにでもひろめたい!
「そうだね。とりあえず、フィルド君達への来訪もだが。もうそろそろ、シュライゼン様達へのパン教室に、エリザベート様にもパン教室を開かなくてはならないのだろう?」
「あ、そうでした!」
「エリザベート様からのお手紙はまだなんだね?」
「そうですね、まだです!」
うっかりうっかり。
過大な目標を立てたって、現実から目を離してどうする? シュライゼン様やカイザークさんにもだけど、今度はエリザベート様にもパン作りをお教えしなくてはならない。
頑張らなくちゃ!
「シュラ様達には何をお教えする予定なんだい?」
「まだまだプチパンですね? でも、今度はコッペパンを予定しています」
「サンドイッチにも最適だしね? 私達でも成形はまだまだ遠く及ばないが」
「それでも。毎日やっていますからすごいです!」
シェトラスさんやエイマーさんの特訓用のパン作りは、主に食パンとプチパン。たまにバターロール。
味も私が監修しているので問題はなく、あるとすれば焼きまでの
原因は成形の時。
力を込めすぎたり……などの原因が主だ。私も専門学校の頃からよくやってしまってた。
でも、わずかひと月未満で、ほとんどマシな状態になったのは、やはりプロの料理人だからだろう!
特にプチパンや食パンは大量消費するから、手が多いことに越したことはない。ちなみに、レイ君はまだまだ要修行中だ。
さて、そろそろお昼前。
フィルドさん達もやって来るだろうし、次はどんなお土産をいただけるのか期待してしまう気持ちもあった。
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