109-3.おバカさんを①(ユリアネス視点)






 *・*・*(ユリアネス視点)








「……あんな簡易的な封印でよかったの?」


「ま、注意してくれているんだし? あれくらいの緩さでもいいと思うよ?」



 狭間で、今日もお昼寝しているシアを浮かせて、私と夫のフィルドは水鏡を通じて、王女チャロナ達を見ていたりした。


 時々、姫に真実を告げようとする者には、封印と注意をしたり。他にも口止めの魔法を施したり。


 粗は多いが、夫が言うにはこれくらいでいいと。


 完全に封印させたら、つまらないと言うのだ。



「カイルキアの両親にも知れてしまってるけど……」


「けど、言いふらす子達じゃないだろう?」


「まあ、そうだけど……」



 言ってることと行動がちぐはぐだらけで、少しめちゃくちゃではあるが。枯渇の悪食による、食の復興についてこれでも考えているのだから、我が夫ながら不思議ではあるところだ。



「けど、レクターとかも考えるね? チャロナへの一番のプレゼントをカイルキアにするだなんて!」


「いいのではなくて? 成人の儀もだけれど、誕生日には一番の贈り物になるわ」


「ふふ。なら国どころか世界中を挙げて、盛大にお祝いしてやろうじゃないか?」


「封印の謝罪として?」


「それもだけど。お馬鹿な強固派の連中に利用させられないためさ?」



 それくらいの余興は、あのおばかさん達に目にもの見せてあげなくては。


 最近、セルディアス内での捕縛もうまく助けられているし、根深い馬鹿な子にもそろそろ手を伸ばす事ができそうだ。


 だが、もしかしたら姫のことについて知っている輩もいるかもしれない。他国の王妃に推薦すべきだと、画策されているかもしれないのだ。


 それは絶対止めなくては。



「ねえ、フィルド」


「なーに?」


「そのおばかさん。特におばかな子達をあの城から引きずり落とす方法は、シュライゼン達に任せるの?」


「あー。それでもいいけど」



 フィルドが水鏡を軽く撫でて、見せる映像を変えると。


 見るからに醜い男が、ハンカチの端を噛みながらぶつぶつと何かを言っているところだった。



「こりゃ無理だ。ユリアネス、君はシュライゼンとカイザークを誘導させるようにして連れてきて。俺はこのおバカがいけないことを言い出さないように見張っておくよ」


「わかったわ」



 時折、性格の悪い言葉遣いをしかける我が夫ではあるが、この水鏡に映る男は夫の癇に障ったらしいわ。私だって嫌だけど……あとどれくらいいるのかしら。


 セルディアス王家に根付いた、おばかさん達は。


 ひとまず、別の水鏡を取り出して、私はシュライゼンとカイザークを探すことにしたのだった。

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