102-3.第三回パンケーキ教室①(クラット視点)
*・*・*(クラット視点)
たくさんのコカトリスの卵。
それだけだって、俺らのような孤児院の子供には贅沢品でしかないのに。
チャロナってお姉ちゃんは、この孤児院を支援してくれてるシュライゼン王子様とは仲が良くて、一緒にこれを持って来てくれた。
卵自体は、ローザリオン公爵家って、俺らには雲の上のような人からの、ってことで分けてくれたらしいけど。
同じかそれ以上に、雲の上の御方って言われてるシュライゼン王子様がここに来てくれてるんだから、きっと何か言ってくれたのかもしれない。
「今日はこの卵を使って、フライパンで出来るケーキを作りまーす!」
『『『ケーキ!?』』』
「フライパンだけでケーキが作れるの!?」
「私、窯でなきゃ出来ないって思ってたけど……」
「ふふふ。ちょっと力仕事だけど。美味しいケーキが作れますから頑張りましょうね?」
『『『はーい!!』』』
そして、お姉ちゃんがまた大きな紙を黒板に貼り付けて。
必要な材料と作り方が書いてあった。
『スフレパンケーキ』
《材料》
卵
牛乳
●グラニュー糖
●米粉(ふるっておく)
●ベーキングパウダーもしくは重曹
メープルシロップや蜂蜜などのトッピング
油
<作り方>
①卵を黄身と白身に分けておく
②黄身に●の材料を加えて、泡立て器でよく混ぜておく
③白身を、冷凍庫もしくは
④③を②のボウルに加えて、ヘラで優しく混ぜ合わせる
⑤フライパンに薄く油を引いて、弱火で熱する
⑥温まったら、一度濡れ布巾の上で冷ましてから、④の生地をスプーンで乗せて、フタをしてじっくり焼く
⑦焼き色がついたら、ひっくり返してまた同じように焼く
⑧焼き上がったら、お皿に乗せてトッピングしたら完成
『『『へ〜〜??』』』
俺は難しいことはよくわかんないけど、こんな簡単にケーキができちゃうんだと思うと、ワクワクしないわけがない。
けど、まずは卵を割って、黄色と白に分けるのが大変だった。
「うっわ、つぶれた!」
「ドロドロしてる……」
「うえーん。これ難しいよぉ〜……」
大苦戦だ!
なんで、ただ卵を割って仕分けるだけでこんなにも難しいんだ?
一緒にしちゃダメなのかって、お姉ちゃんに聞いたら。
「ふわふわの美味しいケーキじゃなくなるからだよ?」
と言われたので、皆失敗しながらも卵を分けるのを頑張った。
俺も何個かダメにしちゃったのはあるけど。それはマザーや職員の人達が、マヨネーズ作るのに使ってくれるんだって。
とりあえず、綺麗に出来た卵を今日も一緒になったターニャとケーミィで混ぜたんだけど。
「「「すっごく難しい!!」」」
お姉ちゃんが見本で見せてくれたように、すぐに泡のようにならない。
混ぜても混ぜても、ちょっと白っぽくなっただけで。シャンプーのような白い泡のようにはならない。
けど、それは他の皆も同じで腕がすぐに疲れるのでさっきの卵割るのよりも疲れてた。
もち、俺もムッチャクチャ疲れてた。
「お姉さん、すごいねー?」
「ねー……マザー達より若いのに、これ作るの全然疲れてなかったし」
「けど、これ作ったらケーキ食い放題なんだろ?」
「「頑張ろ!」」
「おー!」
とにかく、ガシガシかき混ぜていったら。
段々と泡っぽくなったので、砂糖も忘れずに少しずつ入れてからかき混ぜて。
出来上がる頃には、全員流石にバテてた。
「頑張りましたわね!」
今日も来てくれたアイリーン様も、俺らと同じように作ってたけど、すぐに泡になっていた。
そう言えば、アイリーン様って卵くれた公爵様の家の人だっけ?
「アイリーン様ー」
「はい、なんでしょう?」
「卵をくださったのって、アイリーン様が?」
「いいえ。わたくしのお兄様であるローザリオン公爵当主の計らいですわ」
「お兄様?」
会ったことあったっけ? と思ってると、アイリーン様はクスクス笑いながら俺らにこう言った。
「笑顔の少ない綺麗なお兄様ですわ〜。ここの援助も少し携わっていらっしゃいますので、時々はマザーにご挨拶されるようですけれど」
笑顔があんまりなくて。
でも、綺麗なお貴族様?
あんまり来ないせいか、俺らの記憶にはほとんどないのも無理はない。
とりあえず、公爵様のことは置いといて、ケーキ作りの仕上げに移ることになった。
「班の一人が焼いている間に、残りの人は生クリームでホイップと言うトッピングを作りましょう!」
『『『ホイップ??』』』
「イチゴのケーキによく塗ってある白いクリームですね」
『『『わーい!!』』』
けど、これを作るのも泡同様に大変だった。
火を使うのは俺が担当することになり、ケーミィ達が頑張って氷水のボウルにつけた生クリームのボウルをまた泡立て器でガシャガシャかき混ぜていたけど。
なかなか出来ないので、しばらくはただの生クリームだった。
(俺は、こっちを頑張んなくちゃ!)
熱くしたフライパンを一度濡れた布巾の上に置くと、火傷しそうなくらいに熱い音が聞こえてきて。
すぐに魔石コンロの上に置いてから、油を引いて火をつけたのだった。
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