94-1.レシピ集が一冊に
*・*・*
そう言えばここ最近お休み取っていなかったと、
ぐっすり寝てから、ロティと一緒に食堂に向かうことにした。
「おはようございます!」
『はにょーございましゅでふぅう!』
「「おはよう」」
『おはようでやんす!』
シェトラスさん達もだが、レイ君も元気いっぱいに挨拶してくれた。
悠花さんと一緒よりは、ほとんどこっちにいるけどいいのかなと以前聞いたら。
『チャロナはんやロティの手伝いがもっと出来るように頑張りたいからでやんす!』
本音は、ロティと一緒にいたい、手伝いだろうけど、前向きなのはいいことだ。
私も他人の事は言えないが、恋に積極的に行動することは決して悪い事じゃない。
ロティの方は、どう思っているかはわかんないけど。
「今日の朝ごはんはペポロンのポタージュに、ラタトゥイユ入りのオムレツだよ!」
『わーい!』
「ありがとうございます!」
パンはまだまだ私が前日に作った食パンとかを、窯でトーストする方法でしかないが。
この温め直しだけでも、使用人の皆さんには好評で。
特に、カイルキア様は最低でも三、四枚はお代わりされるみたい。嬉しいことだ。
「今日はなにしてようか、ロティ?」
『んちょ……んちょ、何しまふ?』
「散歩……はまだ早いし。魔法訓練は最近落ち着いてきてるし、今日は休んだ方がいいからパス。菜園にはとりあえず行く?」
『行きまふ!』
あとは、カイザークさんからもらったレシピ本をまた読むのもいいし、レシピ集を一度形にするのもいいかもしれない。
その予定を立てながら、美味しい朝食をペロリと平らげて。
菜園に行くのに、少し着替えてからロティと歩いて行くことに。
「おっはよーございます!」
『はにょーございましゅでふぅうう!』
「やあ、おはよう〜」
菜園に行くと、ラスティさんが草取りをしてたのか、手に大きな雑草の束を抱えたまま出迎えてくれた。
エピアちゃんは、ぱっと見、見当たらないけど、どこかに行っているのだろか?
「今日はお休みですが、様子見に来ました!」
「うんうん。元気だね〜? ちょうどエピアが見に行ってると思うよ?」
「そうなんですか?」
それなら、少し奥の方だから見当たらなくて当然かも。
ラスティさんと別れて、奥の私が借りてるスペースに向かえば、エピアちゃんがじーっと米の稲を見ていた。
「エピアちゃん!」
『でふううううう!』
「……あ、チャロナちゃんにロティちゃん」
声をかけると、エピアちゃんは笑顔で振り返ってくれた。
まだ一部の人にだけど、恥ずかしがり屋さんが少しずつ落ち着いて笑顔を見せれるようになったらしい。
恋人になったサイラ君にはもちろんだと思うけど。
「米の稲を見ててどうしたの?」
『でっふ』
「あ、うん。あのね?」
エピアちゃんは私のスペースに、ウルクル様が定期的に植えておけと言われた米の稲穂を触りながら話し出した。
「ウルクル様は、ホムラや黒蓮とかでは主食になってたっておっしゃったけど。パンの麦とも違うこんな美味しい穀物があるだなんて知らなかったなあ、って」
「……そうだね。この国にはほとんど流通してなかったのかな?」
「友好国ではあるけど、全部が全部貿易の審査に通ってるわけじゃないし」
そして、私の方に振り返るとガシッと両手を握られた。
「この穀物のもっと美味しい食べ方ってなに? 何があるの!」
「え、え。気に入ったの?」
「うん。あんなにも、魚とか肉に合うなんて思ってもみなかった!」
どうやら、味噌煮や照り焼きチキンと一緒に出したお陰で気に入ってしまったらしい。
けど、ホムラでの食べ方でない、前世の日本の知識だからあんまり広め過ぎてはいけないと思うけど。
これからも、菜園を借りる立場として、友達として、仲間として。少しくらいならいいんじゃないかと思う。
「えっと。米は国によっては『ライス』とか呼ばれてたりするんだけど。その名前で料理名もあるの」
「何があるの?」
「カレーパンの中身をもっとサラサラにしたカレーライスや。ケチャップをベースに米と絡めて、卵で巻いたオムライスっていうのかな。あと、ホムラにもあるんだけど、炒めるご飯って意味でチャーハンとか」
「おお!」
『どれも美味ちーでふううううう!』
そう言えば、悠花さんにもカレーを食べたいと言われてたから作った方がいいかな?
けど、カイルキア様には甘口を作った方がいいだろうし、別に中辛や辛口にこだわる意味はない。
それと。
「エピアちゃんならどれが食べたい?」
「え、えっと……」
出来れば、先に友達の意見を聞いておきたい。
じゃがチーズパン以来だが、たまには他の人の意見を聞くのもいいだろうし。
少し悩んでいたが、決めた途端もじもじとし出した。
「お……オムライスっていうのが気になる」
「おk。今日は無理だけど、明日とか明後日にするね?」
「う、うん!」
悠花さんには悪いが、カレーライスはまた別の機会にしよう。
となると、必要な材料は厨房にあるので可能だから。
次は、午後のお散歩の時間までレシピ集を確認しよう!
「さて、戻ってきたからには……ロティ?」
『でっふ! レシピ集ぅうう、
初めて使うステータスだけど、部屋の中に響くロティの声に呼応するように。
今まで紙で起こしてたレシピのデータが、ディスプレイが何重どころか、何十以上にも重なって出てきた!
「うっわ、こんなにも作ってたんだ!」
『ご主人様ぁ。コロンの今のあまりをちゅかえば、本の『レシピ集』が出来まふ!』
「え、そんなこと出来るの?」
『あい!』
なら、またロティにステータス画面を開いてもらい、残ってたコロンのうち、100000をレシピ集の横にある矢印のタップから注ぎ込めば。
一瞬、部屋の中が白く光ったが、私の前には重厚そうな分厚い本が浮かんでいたのだった!
「これが……?」
『レシピ集でふううううう!』
「あれ、意外と重くない?」
分厚いから結構重いイメージがあったが、例えるならアクリルファイルとかみたいな軽さ。
開くと、これまで
そしてこれは、収納棚に出し入れも可能だが、レシピが増えることによって自動的にページも増えていく便利道具にもなるんだって!
「こ、これ、カイルキア様達にも見せに行こう!」
『でっふ!』
お昼前だし、今はお仕事だろうけど、何かあってからだと遅いから逐一報告するように言われているから。
レシピ集を抱えたまま執務室に行く途中、前を見てなかったせいか誰かとぶつかってしまった!
「す、すみません!」
「いえいえ、大丈夫ですよチャロナさん」
「ゼーレンさん!」
カイザークさんに負けず劣らず素敵なおじいさんの執事長さん。
たしか、カイルキア様のご実家の時からお仕えされてたらしい。
「何やら重そうなものを抱えていますが、その本は?」
「ちょ、ちょっと、旦那様にご報告しようと!」
『でっふ!』
「そうですか。今日はお休みらしいですが、勉強家さんですね?」
「い、いえ」
「また明日からのパンも楽しみにしてますよ?」
「は、はい!」
けどぶつかったのは悪いことだから、もう一度謝ってから執務室にゆっくりと向かい。
中に入らせてもらってから、すぐにレクター先生と一緒にレシピ集を見てもらうことになった。
「これは……」
「いにしえの口伝にふさわしいかそれ以上の宝だよ! これはシュラ様にもお伝えした方がいいね!」
「すぐにでも呼ぶか?」
「出来れば」
やっぱり、お二人にもすごい本だと言うのはわかってしまったようで、カイルキア様は急いで魔法鳥を使って伝達魔法で飛ばした。
そして、10分後くらいにそのシュライゼン様が転移で現れた。
「どんな本なんだい?」
「こ、こちらです」
私が持ったままなので、差し出すと重さを予想してたのか受け取った時の軽さに驚かれていた。
何ページか確認すると、その本はすぐに手もとに戻ってきたが。
「これは国宝級にも値する宝なんだぞ。チャロナ、この屋敷以外では無闇に出さない方がいい」
「わ、わかりました」
「けど、これまで出来なかったのはなんでなんだい?」
『ロティのナビレベルのせいでふ!』
「なるほど」
私も聞いてはいなかったが、ロティのレベルとも関係があったようだ。
とにかく、これはSS級以上のお宝になるため、シェトラスさん達以外にはあまり見せないようにとのお達しが出された。
「ところでチャロナ。今日はその格好から見るに休息日かい?」
「え、ええ」
「じゃあ。お兄ちゃんと体を動かすついでに浮遊の魔法を教えちゃうんだぞ!」
「え」
フィーガスさんの直弟子。つまりは、兄弟子さんにとんでもない魔法を教わるのが決定してしまいました。
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