90-3.お味噌汁


 まず、事前に水に浸しておいた昆布の様子を見る。


 大鍋いっぱいの水と、乾いた昆布がどうなっているのか。


 蓋を開けると、濃い緑色の艶々した昆布とのご対面となった。



「うん、出来てる!」


『でゅふ、でふぅうう!』



 だしがらになった昆布は、まだ使うので取り出したら収納棚に入れる予定。


 少し薄緑色になってる昆布出汁は火にかけて沸騰させる。



「レイくーん。ちょっと手伝ってー」


『あいあいさー!』



 少し沸騰させて弱火にしてから、昆布出汁から昆布を取り出し。


 そこに、何故か銀製器具シルバーアイテムの中にあった鰹節を削る機械があったので、事前にたっぷりと削り。


 その削り節を遠慮無く鍋に沈めさせたら。



「出汁の取り方は色々あるけど。私はこの鰹節が沈んでから取り出す方かな?」


『ふむふむ。俺っちが鍋の中身をざるにあげればいいでやんすか?』


「うん、お願い」



 そうして、綺麗な黄金色の出汁が完成したら。


 事前に下ごしらえしておいた、悠花ゆうかさんのリクエストのジャガイモの厚切りと玉ねぎの薄切りを使う。



『美味ちーみしょしりゅぅうう!』


「うん。作ろうね?」



 まずは、ジャガイモからよく煮て。


 竹串で少し硬いくらいに刺さったら、次は玉ねぎ。


 両方がいい具合に煮えたら、一旦火を止めて。


 ここで、ヌーガスさんからいただいた味噌の登場だ!



「個人的には濃い目が好きだけど。皆さんは初めてだから、馴染みやすい濃さにしないと」


『ロティはなんでもしゅきでふぅ!』


「ふふ。この味噌の本領発揮だもんね?」



 ヌーガスさんの故郷だと昆布出汁もカツオ出汁もオーソドックスにあるらしいが。


 田舎ゆえか、あんまり都市部には伝わっていないらしい。


 だからか、シュライゼン様達もご存知なかったみたい。


 ちなみに、シュライゼン様のお返事はカイルキア様に見せていただき。



『ちょうど調査隊を組もうとしてたとこだったんだぞ! 見つかったのならありがたい!』



 と言うことで、食べてもらう機会は早くて次のパン教室の日に予定だ。



『お〜みしょみしょ〜』



 さて、肝心のお味噌汁だが。


 箸がないので、銀製器具シルバーアイテムの茶こしに味噌を適量入れてスプーンで溶かす方法にする。


 少量ずつ入れて、味見をするのを繰り返して。


 天の声は聞こえなかったが、いい感じになったら出来上がりだ!



「お待たせしました。ジャガイモと玉ねぎのお味噌汁です!」


『でっふ、でふぅうう!』


「「ほお、これが?」」


『ミソニよりは淡い茶色でやんすね?』


『ほほぉ〜。これがミソシル?』



 悠花さんはお夕飯まで部屋でゆっくり休んでいるらしいが、リクエストされたし是非とも食べていただきたいが。


 まずは、厨房関係者だけでいただくのもいいだろう。


 小部屋に移動して、スープカップに注いだ味噌汁をスプーンでいただくことに。



「「「いただきまーす」」」


『うむ。いただくぞ』


『いちゃだきまふぅう!』


『いただくでやんす』



 具材もいいが、まずは汁の方から。







【PTを付与します。



『ほっと出来る味噌汁(ジャガイモと玉ねぎ)』



 ・製造2リットル=2000PT

 ・食事1人前=200PT



 →合計2200PT獲得



 レシピ集にデータ化されました!





 次のレベルまで、あと278250PT




 】





 ふわっと香る昆布と鰹節のいい匂い。


 塩気以外にも、入れた野菜のお陰で甘味が増してる味噌汁のいい味。


 細ネギはないけど、いい塩梅だ。


 懐かしくて、少し涙ぐんだが泣いてる場合ではない。


 PTはまずまずだが、皆さんの反応はどうだろうか?




『ほぅ……。何故かほっと出来る味じゃのぅ。野菜の甘さもあるが、この汁の味わいはなんじゃ?』


「「ええ、本当に」」


『おみしょしるでふぅうう!』


『普通のスープより飲みやすいでやんすね!』



 予想以上の高評価。


 ウルクル様にも喜んでいただけて何よりだ。



「味のベースとなるのはお味噌ですが。出汁というのに昆布と鰹節を使ったのです。お味噌だけだと塩辛くなるので」


『ほぅ。コンブとカツオ節か。妾は知らなんだが、これほどまでに優しい味わいになるのかの?』


「はい。私の前世……日本という国では定番のスープでした」


『ふむふむ。芋もいい茹で加減じゃな。ホロホロ崩れる食感がなんとも言えん。玉ねぎはシャキシャキといい歯応えじゃな?』


「ありがとうございます」



 神様にこれだけ気に入られたら、お夕飯は大丈夫だろう。



『じゃが。もう一味欲しい感じじゃな?』



 おっと、ご指摘をいただきました。



「細いネギという植物があると、味が引き締まるんです。玉ねぎとはまた違うにですが」


『ほぅ。ネギ……とな?』


「見た目は雑草にも捉えられがちですが」


『ふむふむ。記憶を読んでも構わぬか?』


「はい、どうぞ」



 額に手を当てられて、待つこと数秒。


 ウルクル様は、少し首を傾げられた。



『あのような草がの?』


「あるんですか!」


『うむ。主の故郷、ホムラでも奥地のところじゃの。ほとんど家畜の餌らしいが』


「おお!」



 ネギが現存してるとわかれば、是非欲しいとお願いしてみると。


 ウルクル様は、魔法でパッと取り出してくださり、見覚えのある細ネギを急いで少量刻んでまだ残ってる味噌汁の器に入れると!



「「んん!」」


『『ほう!』』


『美味ちーでふぅうう!』


「やっぱり有り無しだと違う!」



 満足のいく出来となったので。


 配膳の時間になると、まずやって来られたのはカイルキア様とレクター先生でした。

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