86-1.白パンからスタート
*・*・*
朝起きて、昨夜やり忘れてたコロンの振り分けを行って
いい感じに振り分けても、特にどれが進化することもなく終わり。
身支度を整えてから、ロティと厨房に向かえば。
シェトラスさん達には当然ロティの変化には驚かれたが、ひとり、昨夜は居合わせたようでいなかったレイ君が。
予想以上に蕩けた表情になって、床に突っ伏してしまった。
『か……かわ、かわ、かわぁああああああ!』
『でふ? おにーしゃん、どうちたでふか?』
「ロティくんがさらに可愛らしくなってるのに、驚いてるんだろう?」
『でふ? ロティ、可愛いーでふ?』
「「「うん」」」
「ロティはいつだって可愛いよ?」
『でっふぅうう!』
「わっと!…………ぎぶぎぶぎぶ!」
ロティがぎゅーっと抱きついてきたまでは良かったけど。そこから、久々に全腕力にものを言わせるくらいの強さで、首を締め上げられるほど腕を回されて。
これには、流石のエイマーさん達も手を貸してくださって止めてくださった。
『……ごめんなさいでふ』
「いいよ。嬉しかったんでしょ?」
『でふぅ……』
見た目は変わっても、中身はまだまだ幼い性格のロティのままだ。
今も、しゅんっとなりながら羽根をへしょげてる姿は可愛い。
それに、きちんと反省してるので頭を撫でて許してあげた。
「さて、チャロナくん。シュラ様達には何のパンを教えるつもりだい?」
「そうですね。基本に忠実……白パンとペポロンパン。あと、少し変わり種で『牛乳パン』を作ろうかと」
「牛乳……?」
「の、パン?」
「はい。バターと牛乳……あと、コンデンスミルクを混ぜたクリームを挟んだパンです」
「「コンデンスミルク??」」
「えっと……作る時にお教えしますね?」
「「うん」」
どうやら、練乳……コンデンスミルクもこの世界では失われたか、あるいは違う形で存在しているか。
けど、ないなら作ればいい。
今の
「やっほー! 来たんだぞ、チャロナ!」
「少し振りですね、チャロナ嬢」
「こんにちは!」
昼を過ぎたあたりになってから。
シュライゼン様とカイザークさんがやってこられたので、お着替えをされてからパン作りをスタートすることにした。
シュライゼン様は以前作られたらしいコックスーツだったが、カイザークさんも誰かに頼んだのか白いコックスーツを身につけられた。
片眼鏡も相まって、ベテランシェフに見えるくらいカッコいい!
「では。これから作るパンは基礎の基礎と思ってください」
「わかったんだぞ!」
「今日はロティを使わずに、手でこねるところからやりましょう。発酵も同様に行っていきます!」
「承知しました。この爺めにもビシバシ鍛え込んでくだされ」
「は、はい。口出しは色々してしまうかもしれないですが、まずは私が手本を見せますね?」
「おう!」
「はい」
順番に、と行きたいが。
まずはペポロンの下地の仕込みからする事に。
つまりは、ペーストを作っていく。
「ペポロンのパンは、前も食べたけど美味しかったんだぞ!」
「左様にございますか。今日は実に楽しみですなあ?」
「生活魔法は各々の自由に使ってください。でないと、おやつに間に合わないので」
「おやつにも別で作るのかい?」
「いいえ。おやつには皆さんで牛乳パンを作ります」
「牛乳……?」
「の、パンですかな?」
「最初は白パンと同じですので、その時にお教えしますね?」
「ええ」
ペポロンのペーストが出来て、
いよいよ、白パン作りに取り掛かります!
「まず、作り方は色々ありますが。バター以外の材料をボウルに入れてからこねます」
「バターは一緒じゃなくていいのかい?」
「必ずしもダメではありませんが、混ぜやすさと風味を損ないにくいためでもありますね?」
「「ほー」」
とりあえず、シュライゼン様にはプレーンの白パンを。カイザークさんには途中からペーストを入れるのでペポロンの方をお願いすることに。
あと、せっかくなのでシェトラスさん達にも復習を兼ねて実践してもらいます。
「慌てずゆっくり混ぜてください。ある程度混ざってきたら、今度はバターを加えてゆっくりと混ぜていきます」
「む、むぬ!」
「いつもと同じに感じますが。この辺りは大丈夫ですかな?」
「はい、大丈夫ですよ」
捏ねに問題がないと言うことは、前回に教えていただいた発酵と成形に問題があるかもしれない。
とにかく、ペポロンも混ぜてもらってまとまったら。
ここでもラップを使わずに、濡れ布巾で乾燥防止にして。
待ってる間に、手をよく洗うのに皆さんが並んでシンクに立たれた。
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