【記念SS】夏のパン祭り?






 *・*・*









「パン祭りをお屋敷でやってみたい?」


『でふぅ?』


「そうなのよ、チーちゃん!」



 あるの日のおやつ後。


 悠花ゆうかさんが、おやつのシナモンロールを食べながら、にこーっと笑顔になった。



『パンのおまちゅりでふ?』


「そうよ、ロティちゃーん。例のパンに関する祭り。やってみたいと思うのよーん!」


「急にどうしたの?」


「んふふ〜。チーちゃんの美味しいパンがあるなら、ちょっとしたイベント盛り込んでもいいんじゃないかなって」


「その心は?」


「超・絶、のんびり過ぎて暇!」


『「ん〜〜」』



 たしかに、これと言って騒動?もなく平和な毎日ではあるけど。


 悠花さんは、前世のOL時代よりも今の世界の冒険者生活に慣れ過ぎているから、どうやら刺激が欲しいみたい。


 と言っても、パン祭りを実際にやるにしても平和に変わりないけど。



「ちょっとばっかしの、刺激が欲しいのよ!」


「けど、景品とかどうするの?」


「更に、チーちゃんのパン一つか二つ?」


「うーん。それはあんまり意味ないような……」



 ただでさえパンを食べまくるのに、更にパンが景品と言うのも。


 すると、頭の上に何か重みを感じた。



『なにやら、面白き事を考えておるな?』


「「ウルクル様!」」


『ウルしゃまーでふううう!』



 農耕の神であり、このお屋敷の菜園責任者ラスティさんの恋神様。


 見た目は幼女だけど、妖艶さを兼ね備えた美しさを持つ方。


 私がお屋敷に来てからは、ちょくちょく来られるようになったらしいけど。今日はいつからいたのかな?



『なんじゃ? また、美味なるものを馳走してくれるのかえ?』


「少し違うわね? チーちゃんのパンを食べるごとに、印を集めて景品と交換出来るようにするイベントよん」


『ほう、珍妙な?』


「やってもいいんですけど。景品が難しくて」


『ほほう。主らの知ってるのはなんじゃ?』


「え、と。お皿ですね」



 某パンメーカーで有名な催し物ではあるけど。


 この世界でパンを食べるのが疎まれてた環境じゃ意味がない。


 と言うよりも、お皿欲しさにっていうのがまずない。




『皿……か。それならば、あまり価値がないかもしれんの?』


「だから、集めた印の交換に、チーちゃんに好きなパンを作ってもらうとか?」


『それは良い!』


「え、価値ありますか?」


「『ある!』」


『ご主人様のパンはしゅごいんでふよ?』


「え、まあ。そうだけど……ずっとパンを食べ続けてたのに、飽きないかなあって」


「『『飽きない(にゃい)!』』」


「そ、そう……かな?」



 神様にまで言われるのであれば、作り甲斐があるけども。



「問題は、食べ過ぎによる腹痛続出とかよ? 単純に、チーちゃんのパンを食べて印を集めてもそこが問題だわ」


『なら、日に食べれるパンの制限をすればよいのではないか?』


「ウルクル様もね?」


『ほっほ』


「けど、悠花さん。ポイントになる印の配分ってどうする?」


「そう、そこよ!」



 どうやら、提案はしてもそこは未定だったみたい。


 なので、ウルクル様も一緒に考えてからロティも入れて四人でカイルキア様のところへ行くことにした。



「……印を集めて、景品となるパンをもらう?」


「たまにゃ、刺激もいいだろ? 食い過ぎ防止のために、1日に食えるパンは制限するが」


「……つまり、それを守ればチャロナのパンが食べ放題になるが。チャロナ、負担にならないか?」


「大丈夫です。いつも多めにパンは作ってるので慣れっこですから!」


「チャロナちゃんがそう言うなら、やってもいいんじゃない?」


「……そう、だな」



 と言うわけで、明日から開催する事になり。


 夕ご飯には、判子を押すシートの紙を皆さんに配る事になり。


 当然、皆さん疑問に思われて。



「「なあなあ、チャロナ。これなーに?」」


「見た所、マス目しか書かれてない紙やけど?」


「えっと、実はー」



 他にも集まって来てから、説明をすると。



「「「マジで!?」」」


「このマス目にいっぱいの判子もろたら……更に、チャロナちゃんのパンが貰える?」


「同じようなもので申し訳ないけど……」


「全然問題ない!」


「お前のパンが食えるんなら、万々歳だ!」


「「なー!」」


「「「「「おおおおおおお!」」」」」



 と言うわけで、やる気に満ち溢れた皆さんが出来上がってしまい。


 翌日から、パン祭りのラッシュが開幕されるのだった。



「各ごはんには1ポイントずつ」



 食べ過ぎ防止のため、各食事に関係するポイントにも制限をかけ。


 元祖のパン祭りのように、長期間による目処をつけさせるためにも。


 慎重にいかねばならない。


 特に、カイルキア様には。



「……何故、一度にたくさんのポイントを貯めてはならない」


「えっと……食べ過ぎでお腹痛くなりますよ?」


「く……」



 カイルキア様には、前科?があるので特に注意するようにレクター先生から言いつけられているので。


 けど、それを言わずとも自覚はされてるが。してても、私のパンはたくさん食べたいようなので、少し悔しがっていた。


 嬉しい事でも、好きな人の体調が悪くなるのは良くない。


 スタンプ表は、基本的に厨房が預かって不正が出来ないようにしている。


 スタンプは、即席なのにウルクル様がバターロールの絵柄をつけたものを創ってくださった。



『チャロナ〜、妾にも〜』


「はい、承りました」



 そして、昼過ぎだけは、ポイント制が変動してくる。


 その理由は、おやつのパンの数。


 一人につき、食べれる量が変わってくるので。


 くるので……皆さんの勢いが凄かった。



「俺三つ!」


「僕は4個!」


「私二個!」


「俺五個!」


「「「食えるのか?」」」


「お残しはダメですよ?」



 とりあえず、男性陣の飛び込みが凄い凄い。


 もちろん、個人差はあるにしても、一気に五個は大丈夫なのだろうか?


 ちなみに、カイルキア様も少し前に来て四個頼まれた。


 おやつは、多めに作ることを考慮してプチパンのチョコだ。


 しばらくは、あんこやジャムでローテーションする予定でいる。



「へー? 面白い事やってんな?」


「おーれ、もやりたーい!」



 今日も魔法訓練指導に来てくださった、フィーガスさんとシュライゼン様だけど。


 それは無理だろうと、フィーガスさんに却下されていた。



「ダメだろ? あんた、毎日は来れねーだろーが?」


「ぶーぶー。フィーだってそーじゃん!」


「俺は。ガキみてぇに貪り食わねーんだよ。嬢ちゃんのパンが景品なのは、たしかに魅力的だがな?」


「チャロナチャロナ〜。俺もやっちゃダメ?」


「えっと……一応期限があるんですが」


「どれくらい?」


「二週間です……」


「oh......(´・ω・`)」



 二週間で毎日貯めやすい合計ポイントになっているので、結構シビアな内容だ。


 シュライゼン様は結構食べる量が多いけど、お腹を壊しかねないからと諦めてもらうことに。


 最後まで、やりたいやりたいとごねながら帰られたけど。



『ご主人様ぁ、ロティもでふぅ』


「はいはーい」



 かく言う私とロティも、自分達で作るけど参加する事に。


 お屋敷の方全員が参加だから、スタンプ表は全員分あるけど。


 ちゃんと貯まるかどうか少し心配だ。


 それから、一週間が過ぎて。



「チーちゃぁん! 今日でもう貯まるわよん!」


「え、悠花さん。まだ一週間だけど?」


「おやつの分頑張ったらすぐよぉ」


「あら……」



 言い出しっぺが最初とは。


 まあ、誰も競ってはいないしいいけど。


 スタンプ表を確認すると、たしかに今のお昼ご飯で満杯になる数だった。



「悠花さんは何がいいの?」


「そうね。…………せっかくだから、メンチカツサンドの大きいの一つ欲しいわ!」


「わかった。今日がいいの?」


「出来ることなら!」


「俺も頼む」


「「カイル(様)!」」



 どうやら、カイルキア様まで無理なく達成されたようで。


 スタンプ表を確認すると、たしかに残りひとマスになっていた。



「……今日でなくともいいが。チョココロネを頼みたい」


「わかりました。では、明日のおやつに作りますね?」


「頼む」


「あんた、腹壊さなかったか?」


「問題ない」



 うん、たしかに問題はなさそうだったけど。


 結構おやつでガンガン食べられてたから。


 少し心配にはなったが、顔色を見る限り無茶してないようだから大丈夫かも。


 ひとまず、最初はお二人で終わり。


 その後、期限が近づくにつれて、いろんな人が集まってきて。


 悩んだり、即決したりと、色んな人の表情が見れて楽しかった。



『ロティは〜あんぱんでふぅう!』


「普通の?」


『にゅ、おもち入りがいいでふ〜』


「じゃ、私もそれにしようかな?」



 それに、相棒の笑顔も見れたのなら、嬉しくないわけがない。


 第一回?パン祭り、無事に成功に終わったのだった。

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