82-2.餅つき練習②
*・*・*
タイマーが鳴って、もち米の蒸し具合を確認してから。
1回目は実演も兼ねて、説明することにしまして。
シェトラスさんと一緒に蒸し器を持ちながら、ゆっくりと臼の近くに設置したテーブルの上に置く。
「これから、餅つきの実演に移らせていただきますね? マックスさん、いいですか?」
「まっかせろ!」
今日は、ラスティさん達もいるので
軽装の悠花さんが、腕を回しながらやって来られてから、シェトラスさんが持ち上げた杵を受け取り。
余裕で片手で持ち上げると、その表情はやる気に満ち溢れていた。
「こちらの、臼の中に蒸したもち米を入れます」
次に、全員に臼の周りに集まってもらい、見学をお願いした。
しっかり水気を拭った、臼の中に蒸し布をシェトラスさんに広げてもらって、もち米を入れ。
次に、悠花さんの出番だ。
「まずは、つくのではなく。米の粒を潰す作業です」
杵で、体重をかけながらぐいぐいと押し潰してもらい、臼の周りを回るように作業していく。
いきなりついても、もち米が均一に潰せないので、この作業は大事だ。
「ある程度潰れて、合いの手を入れやすくなったら。……杵をバケツの水につけて、私も手を濡らしたら」
ここから、いよいよ本番だ!
『でっふ!』
「いくよ!」
「せーの!」
もち米を、私が手でまとめて、そこに悠花さんが杵でつく!
ちょっと声が上がったが、ここは時間勝負なので気にしないでおく。
悠花さんがついたら、私が外から内に織り込むようにもち米をまとめて。
そこから、ついてかえしての繰り返し!
「せーの!」
「そらよ!」
『でっふ!』
「せーの!」
「よいしょ!」
杵も時々つく面を水で濡らして。
私は絶えずかえしを頑張り。
悠花さんは途中、何度か息を吐いたが、それでも頑張って杵を振るって。
もち米の粒が消えて、私達には見覚えのあるお餅の姿になってきたら。
杵に、漫画かアニメで見たような、餅が貼りついて伸びる感じになってきた。
『ほっほ。ほんに、伸びたのぉ』
「へ〜〜。こうやって作るんだ〜?」
「すごいね、カイル?」
「ああ。これは重労働だな。男がやった方がいい」
そうして、10分後くらいに完成したら。
素早く、シェトラスさんに入ってもらってつきたてのお餅を一緒に持ち上げてもらい。
エイマーさんがスタンバイしてもらってるテーブルに向かい。
この時、ボウルの中を濡らしておくと、ボウルに餅がくっつきにくくなるので大事。
臼と杵の方も、使い終わったら、レイ君に言っておいた熱湯を入れてつけ置き。
「これがお餅です。今からひと口サイズに切り分けますので。お好みの食べ方で召し上がっていただきます!」
「……どう、食べるのだ?」
「はい。餡子、砂糖醤油と言うものと。大根をすりおろして、醤油を混ぜたものがあります」
「ほう?」
カイルキア様に聞かれたので、すぐに答えると。カイルキア様の目が光った気がしたのは気のせいじゃないかも。
とりあえず、それぞれの見本を作るのにシェトラスさん達と分担してお皿に乗せていく。
私が餅をちぎり、エイマーさんが餡子。シェトラスさんが砂糖醤油に絡めて、レイ君がおろし醤油を乗せて。
それぞれを、見やすい位置に置くと。観覧してた皆さんが声を上げた。
『おお! 色味はどれも派手さはないが、素朴な雰囲気で実に美味の予感じゃ!』
「このショーユって、な〜に?」
「エスメラルダさんの故郷付近では、定番の調味料なんです。そのままだと塩辛いんですが。大根をすりおろしたのに合わせたりすると、美味しいですよ?」
「「へ〜」」
「功労者の俺、最初それにする!」
「はーい」
悠花さんはてっきり、あんころ餅から行くかと思ったけど。少し塩辛いのが欲しいのかな?と、とりあえず作る事にして。
あんころ餅は、カイルキア様、私、ロティ、エイマーさん、エピアちゃん。
砂糖醤油は、ウルクル様、ラスティさん、シェトラスさん。
おろし醤油が、レクター先生、悠花さん、レイ君。
配膳したら、すぐに食べてと伝えておくのも忘れない。
お餅は、すぐに乾燥しちゃうからだ。
「気にせずに召し上がってください。あと、急いで食べると喉に詰まりやすいので気をつけてください」
「わかった」
けど、やっぱりお屋敷の主人であるカイルキア様が召し上がってから皆さん食べるようで。
フォークで餡子がついたお餅を刺して口に入れられると、つきたてだから、お餅が伸びること伸びること!
当然、悠花さんもだがレクター先生まで笑い出した。
「あっはっは! そうなるよな!」
「くっくく……カイルが苦戦してる!」
「おっかし!」
『ほっほっほ。斯様にまで伸びるのか。よく噛み切らねばなるまいの?』
のんきに言われるウルクル様も、笑いながらご自分がお持ちのお皿にフォークを刺した。
「…………多少食べにくいが、美味い!」
「ありがとうございます!」
「そのままだと、あまり味がないが。アンコと絡めるとなんとも言えない味わいだ」
「カイルー、オロシショーユって言うのもいけるよ。ちょっとピリッとしてるけど、さっぱりしてて」
『砂糖ショーユも美味ぞ!』
「……そうか。が、アンコのを追加で頼む」
「『おい!』」
カイルキア様、よっぽど餡子入りが気に入られたみたいだ。
とりあえず、追加のあんころ餅を作ってお渡ししてから私も自分のあんころ餅をロティと一緒に食べたら。
【PTを付与します。
『お餅シリーズ』
・製造500g=20000PT
・食事1皿=1000PT
→合計21000PT獲得!
レシピ集にデータ化されました!
次のレベルUPまであと4082200PT
口福、ならびに豊潤の効果発動により、
→もち米……5000000コロン獲得!
】
これは。
ピザに次ぐ、高単位のPTが出てきた。
となると、この後の追加分も合わせたらきっと。
レベルアップまではいかずとも、かなりのPT加算になるかもしれない。
気を緩めちゃいけないけど。
(けど、美味しい〜〜!)
つきたてのお餅は言うまでもなく、もちもちで伸びて柔らかくて。
少し緩めの固さに炊いた餡子の柔らかさと甘さにマッチしていて。
フォークで刺して食べるから、先端が当たらないように気をつけて食べなくちゃいけないが。
それを気にしないくらい、出来立てつきたてのお餅は美味しくて。
口福の効果、豊潤の加護のお陰で幸せ〜に体が包まれていくようで。
ちょっと、涙ぐんじゃうけど、成功してよかった!
『おいち〜でふ、おいち〜でふぅううう!』
ロティも大喜びで、子供用フォークを使いながらもちもちと自分のあんころ餅を堪能していた。
その笑顔全開に、近くで当然食べてたレイ君の目が、ハートマークが浮かんでるかってくらい、メロメロになってしまってて。
その状態でお餅を口に運んでたら、案の定、お餅を喉に詰めかけたと言う事態が起きたけど。
皆に少し苦笑いされながらも、悠花さんが背を叩いて落ち着かせたことでなんとかなり。
1回目を食べ終えてからは、2回目をどうしようか話し合う事になった。
「男なら腹に余裕はあるが。2回目もこの量だと少し堪えるな?」
「量の調整は出来ますが……」
「そのモチ米って、すぐ使わないといけない?」
「いいえ。大丈夫ですが」
「なら。明日にしよう。道具をウルクル神が創られるのであれば、説明後に手分けして行える。そこで消費した方がいいな」
「わかりました」
『チャロナ、杵と臼はあとどれくらい必要じゃ?』
「そうですね……あと、5か6組分お願いしてもいいですか?」
「うむ、構わぬぞ」
「調理しやすいことも考慮して、場所は厨房の裏がいいだろう」
「「「はい!」」」
悠花さんの予定通りに、明日餅つき大会開催となりました!
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