81-5.瞬間成長
*・*・*
『あの
「おかえり〜」
農園に戻るなり、ウルクル様はダッシュ?飛行でラスティさんに飛びついていき、仲睦まじい事を見せてくださった。
「あ〜い変わらず、ラブラブね〜?」
「
「うーん。たーしか、ラスティが成人する前だったかしら? 教えてもらった範囲しか知らないけど……あの省エネ状態前のウル様が一目惚れしたからだそうよ」
「ひと!?……省エネ?」
「ローザリオン公爵家で働く決意をしたラスティに、働きやすいように加護の大部分を渡したからだって。元の姿は……それはそれは、あたしのエイマー並みのグラマーな体型に妖艶な美貌を持ってたそうよ?」
「じゃあ……あの姿が本当のじゃないんだ?」
『でふぅ』
そうか、ラスティさんがロリコンだったわけじゃなくて。
理由があって、ウルクル様は今の姿で彼と接しているんだ。
ちょっとだけ、ほっと出来たが。ウルクル様と目が合うと、来い来いと手招きされた。
『さあ、植えようぞ!』
「わ、私もですか?」
『主に与えた加護。それを加えれば、さらに美味な物が出来ようぞ!』
「あ、そうですね!」
『豊潤』の効果は、私のもともと持ってる『
せっかくの歓迎会(私の?)に、美味しいものは欠かせない。
欠かせないからこそ、活用出来るものはしなくっちゃ!
「ウルが、一気に育てるの〜?」
『そうさな。明日には、チャロナが言うにはモチツキの練習をした方が良いと申してな。なら、成長は妾が請け負おうぞ』
「りょ〜か〜い」
「この種もみを、土に埋めればいいんですか?」
「あ、ちょっと待ってね〜?」
すると、ラスティさんがウルクル様を頭に乗せて、地面に置いてた鍬を持ち上げた。
『妾がやっても良いのだぞ?』
「こう言う時は、僕も役に立ちたいんだよ〜」
種もみの袋を持っててと言われたので持っていると。
エピアちゃんも鍬を持って、二人で空いてる畑に並ぶように立った。
「……行きます」
「だいたい、でいいかな〜?」
『そうさな。トウモロコシほどあればよかろう』
「じゃ、行くよ〜?」
せーの、とラスティさんが声を上げると。
一瞬、戦闘が始まったかと勘違いしかけた。
「相変わらず、仕事が早いわね〜?」
「ほえ〜〜……」
『早いでふうううううう!』
何が起きてるかと言うと、音はザッザッとしてるだけなのに。
ラスティさんとエピアちゃんが、機械でも使ってるかと思うくらい、畑を耕し始め。
ものの数分で、10メートルくらいを耕し終えたのだった!
『ほっほ。これだけあればよかろう?』
「……ウル、クル様。種まきは、チャロナちゃんだけの方がいいですか?」
『それはさすがに疲れるであろう。妾らもやろうではないか?』
「はいはーい! あたしも手伝うから、やり方教えて!」
『……主の言葉の使い方は、ようわからぬが』
「あれは限定よ。いつもはこれ」
『そうかえ』
と言うわけで、全員で土を軽く掘っては種もみを少し撒いて蓋をしてを繰り返し。
だいたい、種もみが1/3くらい減ったら、全部の畝に撒き終えて。
土まみれになった手を、生活魔法の
ラスティさんの頭から下りた、ウルクル様の出番となる。
『さて。他を巻き込みかねんが、いかんせんこの地じゃ。ラスティ、育ってしまった場合は妾も手伝おう』
「わかった〜」
『うむ。では』
ラスティさんの胸の辺りくらいまで浮かび上がると、ウルクル様は両手を天に向けて上げられた。
『集え、我が身に宿りし翠の力よ』
天に向けた両の手から、ちょっとずつ緑色の球体が出てきて、まるで蛍のように浮かび上がっていく。
『先へ先へ、このもの達に宿りし翠の力を。集めよ集め、大地の園に』
蛍のような光達が、ウルクル様の手から離れて雪のようにあちこちに散らばっていく。
けど、他の畝には行かずに、もち米のところだけだった。
『……さあ、芽吹け。幾千の粒達よ!』
力のこもった言葉と、畝に光が触れた途端。
緑の光が、目をつむりそうなくらい眩しく光り出して。
手で遮っていると、信じられない出来事が起こり出した。
『……起きるのじゃ』
ウルクル様の次の言葉と同時に、畝から芽が出てきて。
あ、と思った時には、前世では見覚えのあった草の状態になっていき。
さらに、ウルクル様が高笑いし出す時には、収穫できるくらい黄金色に色づいて、穂先が重く垂れ下がっていた。
うん、凄いで解決出来ない神秘を見た。
『ほっほ、これでよかろう。チャロナ?』
「は、はい! 大丈夫です!」
「久しぶりに見たけど、やっぱ神様だから規格外も当然よね〜?」
たしかに、一瞬で豊作状態にさせられるのは、やっぱり神様だからだろう。
『して。道具もすぐに創ろうかえ?』
「え、いや。お疲れじゃないですか?」
『まだまだいけるぞえ!』
今大掛かりな魔法?を披露されたのに、元気だ。
そして、収穫の方も。
鎌で根元を刈る方法ではなく。
穂先だけを、ウルクル様の魔法で全部摘み取って?
ラスティさんが予め用意してくれてた木樽に、もち米の部分だけ入れてくださり。
精米だけは、使う直前にラスティさんがしてくれるからとそのままになるが。
せっかく、明日は餅つきの練習をするから、1キロほどお願いして収納棚にしまう事にした。
前に、エピアちゃんにはちょこっとだけ見せたけど、パネル操作とかはラスティさん達には見えないから、少し不思議がられてしまう。
「へえ〜、亜空間収納の
「そんなとこですね?」
けど、
『オモチ〜オモチオモチでふうう!』
そして、ロティはもち米が収穫出来たからテンションがまた高くなった。
「ロティちゃ〜ん、そんなにも美味しいの〜?」
『おいちーでふ!』
「なんで知ってるのかな〜?」
「『う』」
私が転生者で、ロティはAI精霊だから無闇に知識をばらまいちゃいけない。
のを、おもちが実は私や悠花さんにとっては前世の関係で馴染みの深い食べ物だって言うことを。
ここで言っていいか、非常に悩む。
いい人達なのは確かでも、旦那様の許可なく広めていいことじゃないから。
ウルクル様は、神様だから別だったけど。
『何。精霊でも、魔力溜まりに漂っておっても。知識は豊富さな。主らが知らずとも、ロティは別よの。チャロナはその契約者じゃからな?』
「あ、そっか〜」
ラスティさん、実に単純な納得をされちゃったけど。
恋人?のウルクル様の言葉だからだろうか?
エピアちゃんを見ても、苦笑いされただけだから、本質的には気づいているのかもしれない。
私の、抱えてるものが、この世界では異質過ぎる事を。
「と、とりあえず、明日の練習にはお二人も来てください!」
「うんー」
「楽しみにしてるよ」
とにかく、餅つきの準備はほぼ整った。
あとは、実行するのみ!
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