76-1.匂いも強烈ジェノベーゼピザパン






 *・*・*









 昨日はユリアさん達にも喜んで何よりだけど。


 あの後がもう大変だった。


 揚げパン?みたいなのは、やっぱり世界関係なく皆さん大好きなようで。


 前のカレーパンみたく、押しかけがすごかったんです。



『『『もっと食べたい〜〜〜〜!』』』


『え、えっと……一人一個までなら』


『『『.*・゚(*º∀º*).゚・*.』』』



 と言うわけで、悠花ゆうかさんも加わって、バター焼きあんぱんの大量生産になったわけだが。


 カイルキア様を含めて、お屋敷の人達全員が欲しがったので、作り終わってからは流石に全員で休憩にしたほどでした。



(嬉しいけど、餡子作りが少し大変だからしょっちゅうは難しいなあ……)



 食べてもらえるのはもちろん嬉しいけど、最近少しずつ疲労がたまってきたのか疲れやすくなってきた。


 魔法の訓練も、二日に一度くらいになったし。それは良くない。


 良くないけど、体は一つしかないからうまく休めるようにしなくっちゃ。


 さて、昨日の反省点はここまでにして。



「今日は、明日の差し入れに出す『ピザパン』を作っていきます!」


『でっふ、でふぅ!』



 既にナポリタンドックは作って収納棚に保管済み。


 生地は先に作ってあるので、まずはソース作りからだ。


 もちろん、前に提案した通り、『ジェノベーゼ』を作る予定。



「しかし、こんなにも大量のバジルを……ソースに?」


「生のままだと食べられないので、火を通してからなんですが」


『ロティ、頑張るでふううう!』


「うん。じゃあ、変換チェンジ!」


変換チェンジぃ、フードプロセッサー!』



 フードプロセッサーに変身してくれた、ロティの中に。バジルと岩塩などの材料を入れて……粉砕すれば。



「『「oh......(´・ω・`)」』」


「だ、大丈夫ですよ。こう言う見た目なので」


『それがほんとに美味くなるでやんすか?』


「うん、もちろん!」



 やっぱり、緑色のソースを見たこともない反応はこんな感じになっちゃうか?


 けど、食べてみればその虜になること間違いなし!


 絶対美味しいと言わせてみせます!


 とりあえず、ソースを一旦ボウルに移したんだけど。



「に、においが」


『は、鼻がひん曲がりそうでやんす!』


「チャロナちゃん、これはバジルだけでなくニンニクのせい?」


「だ、大丈夫ですから!」



 すぐに収納棚に入れて、匂いを遮断して。


 次は、トッピングに使う野菜とお肉の準備。


 お肉は、鳥もも肉をソテーして。


 野菜はパプリカ類を薄くスライス。この世界のパプリカって、色が紫とか薄緑とか色々あるから、せっかくなので育ててる種類を使うことにして。


 あとは、プチトマトや玉ねぎのスライス。


 準備が整ったら、成形に突入!



「まずは、いつものように仮伸ばしをしていきます」



 生地は、冷やした場合だと緩みが重要なので、少しずつ少しずつ伸ばしていく。


 一つに集中するのもよくないので、交代で他の生地も同様に仮伸ばしをしていく。


 だいたい、直径10cmくらいになるまで全部伸ばしたら、霧吹きで湿らせた鉄板を用意。



「次に、鉄板の上に乗せて。軽く広げていきます」


「せっかく伸ばしたのに、さらに伸ばすのかい?」


「はい。このパン……えっと、前回のピザと違うのは食感を変えるためですね。そのままだと、かなり厚くなるんですが。いっぺんに伸ばすと大変なので、こうして手法を変えるんです」


「ふむ、なるほど」



 そしてそして。


 生地が全部貼り付け終えたらば。


 問題のジェノベーゼソースのご登場。


 もうここは我慢していただくしかない。


 特に、レイ君は獣の姿を持ってるせいか鼻を異常につまんでたから、離れてもらうしかなかった。



「このソースを薄く塗りつけて、野菜とお肉とチーズを乗せれば。あとは、少し発酵させる以外普通のピザと同じです」


「『「そ……」』」


「そ?」


『それまで、この匂いに耐えなあかんのでやんすか!』


「あ、あはは……うん」


『のおおおおおお!』



 慣れてる人には美味しい匂いでも、そうじゃない人にとっては難しいかも。


 とりあえず、発酵後に、15分程待って焼きあがれば。


 ジェノベーゼの部分も火が通って美味しそうな出来栄えに。



「さ、試食しましょう?」


『でっふぅ!』



 私とロティは乗り気でも、他の皆さんはちょっと拒否してた。


 やっぱり、バジルとニンニクのコラボした匂いには、まだ抵抗感があるようで。



「なーに、してんのよ? ニンニクのいい匂いだけど、明日の試作?」


悠花ゆうかさん」


『ユーカしゃんでふぅ』



 暇になったのか、悠花さんが厨房にやってきた。



「ハロー? 皆はなんでしかめっ面なのよ?」


「ジェノベーゼ作ったから……」


「( ´△`)アァ-」



 理由を話すと、すぐに納得してくれたようで。


 とりあえず、悠花さんも食べる?と聞くと、ぱあって笑顔を見せてくれた。



「食べないわけないわ! このまま取っていいの〜?」


「具材がこぼれやすいから、注意してね?」


「ええ。あっちっち……ふーふー」



 特に冷ましていないので、そのまま手に取り、他の皆さんが苦手にしてるジェノベーゼの香りを深呼吸しながら吸うと。


 思いっきり、かぷりとかぶりついた。



「ん゛んん! 程よい塩気とニンニクのコク。バジルの爽やかな香りがなんとも言えないわ! 野菜と肉の相性も抜群だし、何より……チーズとの相性が良過ぎよ!」


「よかった……」


『ま、マスター……そんなにも美味いのでやんすか?』


「論より証拠、食べてみなさいな? それか、無理矢理にでも押し込もうか?」


『じ、自分で食べるでやんす!』



 ご主人様からの脅しまがいな発言が怖かったのか、レイ君はビュンっとこっちにやってくると、調理台に置いたピザパンの鉄板をじっと見つめる。


 そして、覚悟を決めてからピザパンを手に取り、勢いよくかぶりついた。



『ふ……ふま!』



 ひと口は慎重にだったのが、ふた口目からはガブガブと噛んでいく。


 よっぽど美味しく感じたのか、ぺろっと食べてしまった。



『野菜の甘みと、肉の香ばしさがソースとよく合うでやんすよ! 匂いもそう思えば、美味いでやんす!』


「完全に冷めちゃうと、そんなにも気にならないんだよ?」


『そうでやんすか?』



 子供達には、冷めきった状態で出すつもりでいる。


 提案した私が言うのも何だけど、温かいうちはジェノベーゼの匂いってすごいから。


 それと、レイ君の反応を見てからシェトラスさん達もこっちにやってきた。



「二人がそれほどまでに言うのなら……」


「料理人として、食べないわけにはいかないね?」


「ええ」


「私も食べます!」




 そして、出来立てはやっぱり美味しかったのだった。








【PTを付与します。



『香り豊かなジェノベーゼピザパン』



 ・製造6個=4500PT

 ・食事1個=250PT




 →合計4750PT獲得!




 レシピ集にデータ化されました!



 次のレベルUPまであと4229000PT


 】





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