12-2.ペポロンの下ごしらえ
*・*・*
借りてたツナギから、調理師の作業着に着替えて。
ラスティさんご要望のかぼちゃに似たペポロンを使ったパンの試作をする。
と言っても、
「チャロナくんのパンの虜になってしまったのは、この屋敷全員だからね? バターロールでも、二個や三個じゃ足りないと騒ぐ人達が多かったさ」
お手伝いには、エイマーさんも加わっていただくことに。
シェトラスさんは、少し外出されてるのでお屋敷にはいない。帰って来られるのは夕方以降だそうだ。
「おやつは、ほぼまかないの要領でいいから……ラスティさんが持ってきてくれた、この大量のペポロンを消費していこう」
調理台の上には、まだごく一部だけどペポロンが鎮座していた。
「ホムラにいた頃とか、立ち寄った町の市場のよりも大きい!」
『おっきぃ〜パンプっキンぅ〜!』
「うんうん、お化けかぼちゃに匹敵するかも」
テレビで見たような、小学校の子供くらいの大きさのどでかカボチャ。
皮の色は綺麗なレモンイエロー。
模様は特にないけど、つっるつるの手触り。
一見大味に見えそうだけども。
「ラスティさんの作る作物は、味もいい上に相性が良い物は巨大化する傾向があるんだ。君達のとは違うが、加護
「加護の、スキル?」
「本人が言うには、農作物にしか影響しないようだよ。たしか……『
「限定の
効果が限定されたモノだと、割と後者が多い。
前世の記憶と照らし合せて考えたら、なんだかランダム形式のくじ引きに近いと思っちゃうけど。
「まあ、彼には有用な
「そ、そ、そんな商品をこんなにも使っていいんですか?」
「構いやしないよ? このお屋敷の物だし、ラスティさんからの依頼だ。使い放題に使ってくれていいってことだよ」
「りょ、了解しました!」
『でっふぅ』
「あ〜たしも、手伝うわぁ〜〜!」
「おや?」
タイミング良く?悠花さんことマックスさんがやって来た。
護衛にはなってくれても、お屋敷内だと私のやる事と言えば主にパン作りと厨房補助。
悠花さんは普段冒険者だし、まだ引退するとは言ってなかったので、非常勤のような護衛任務らしく。
ひとまず、明日の買い出し以外は、屋敷でカイルキア様の稽古のお相手。他は、さっきエイマーさんが言ってたリュシアの街にある冒険者ギルドで任務をこなす事となった。
今日は、一応屋敷内にとどまって鍛錬などで暇つぶしをしてたはず。シャワーを浴びても、
「暇で暇でしょーがないわん! もう一人手伝い入るから、なんか言ってちょーだい」
「ああ、レイ殿か?」
「……レイ君が?」
手伝いが増えるのはありがたいけれど、レイ君──レイバルス様をそう呼んで良いと言われ──は虎さんの姿。
どうやって作業するんだなと思ったら、悠花さんの後ろからパタパタと走ってくる音が聞こえてきた。
『マスター! 置いて行かないでやんす!』
「あら、遅かったじゃなぁ〜い?」
やって来たのは、サイラ君よりはもう少し年上な感じの男性だった。
背丈は私より頭一つ分大きく、髪は悠花さんよりさらに明るい銀髪と数カ所にメッシュのような黒髪が混じっている。
服装は黒いラフなシャツとモスグリーンのようなベスト。これまた細身でも筋肉質な体格のイケメンさんだ
ぜーはーぜーはー、と息を整えてるけど。
悠花さんをマスターって呼んだって事は。
「……レイ、君?」
『でっふぅ! レイのおにーしゃんでふぅ!』
「あらそうねぇ? こいつの
「うっわ〜、精霊の人型化って初めて見たよ……」
ロティはもともと、妖精に近い姿だから人型と大差ないしね。
そのロティと手を叩いてると、レイ君は灰色に近い銀の瞳を苦笑いさせた。
『と〜ころが、この姿だと俺っちこき使われまくってたんでぇ』
「あんら〜? 色々食べさせてあ・げ・た・じゃないのさ!」
『い゛でっ!』
愚痴を言うと、主人のマックスさんに速攻で頭を叩かれてしまった。
お約束?コント?はと感じたのはさておき。
ちょっと精悍な虎の風貌を抑えつつも、可愛さ満載のもふもふを今日も触りたかったのに! 昨日堪能させてもらったから、距離は少し置かれてしまったが。
今も、微妙に距離を置かれてます。
「じゃ、じゃあ……二人には力作業をお願いします」
「「と言うと?」」
「ああ、なるほど。いくら加工しやすいペポロンでもこのサイズだ。男手の方が助かる部分も多い。要するに、切ったりする作業だね?」
「はい」
かぼちゃよりも断然柔らかいペポロンだけど、この大きさじゃ生地づくりと同時進行させても、エイマーさんとじゃ手間がかかる。
なので、悠花さん……は、一応男だから、せっかくだし頼りたい。
それがレイ君も加われば、もっと効率がいいはず!
「なるほどねぇ〜? ペポロンをペーストにするのは聞いてるから、基本はエイマーの補助でいいかしらん?」
「そうなるね?」
『りょーかいでやんすぅ』
と言っても、ペーストが出来なきゃ生地作りも出来ないので私もお手伝いする。
「皮むきは私。ワタ抜きはレイ殿、マックス殿は大雑把にカット。チャロナくんは湯がいてもらったのを最初はペーストにしてほしい」
「はい」
もちろん、ペーストが大体出来てからは生地づくりに移る予定。
ロティは怪我しちゃいけないので、頭の上に乗ってもらうことに。
レベルアップして大きさは変わっても、重さは変わっていないのが不思議だ。
「大鍋用意して、お湯を入れて」
ここには、生活魔法の
今までの魔力量なら小鍋いっぱいくらいの量だったけども。
「うっわ! 溢れる、溢れる!」
『はわわわわ!』
一回詠唱しただけなのに、寸胴鍋すれすれの量になってしまった。
こんな事一度もなかったのに?
「あんら、
間一髪、悠花さんが無詠唱でお湯を一部水の球にさせて浮かし、そのまま消失してくれた。
「え、そんな事ある?」
「あのステータスにはなかったけどぉ、あんた達のレベルアップ次第で見れるようになるんじゃない? あたしの場合は、最初からわかってたけど」
「あ、そうか。小説や漫画」
チート能力の大元がああ言った世界観からだし、この世界はどう関係あるかわからなくとも、題材にされちゃうようなタイプだ。
今まで能力が底辺過ぎた私が、条件が揃って『
レベルもまだ低いし、上がるにつれて表示が増えてたから、その部分もいずれ明らかになるはず。
だからって、魔力チートかもしれないのは、ちょっと事前情報欲しかった!
「魔力量が豊富な場合は〜、要はコップに水を注ぐのと同じくらいに思えばいいわ。これくらいなら、イメージしやすいでしょ?」
「お、大雑把だね」
「まあ、教えてくれたの今の親父だから〜」
カイルキア様のお父様の護衛さん。
脳筋でないとは思うけど、教え方雑だ。
だけど、何もないよりはいいので、次からは使い方を調整しよう。
そのために、悠花さんに水球の出し方と消し方を教わりながら実践したら。
『じぇ〜んぶ、消えちゃったでふぅ』
「む、難しいぃい!」
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