第10話 闘争

 ツヴァイと名乗った人形は、容姿が私に似ている気がした。おそらく、私が髪を下ろせばああなるのであろう。


「ヴィクトリア!切り裂け!」


 ツヴァイの人形が大振りに右手を振ってくる。


「そんなのには、あたらない……!」


 ロイドの最小限の動きでかわし、反撃を試みる。しかし……



「そんなんで避けたつもりかよ!ありゃあ!」


「っ!」


 ヴィクトリアと呼ばれている人形の腕から、長い鎌のようなものが伸びてきた。流石にロイドはかわしきれず、飛ばされる。


「今だ!」


 そういって、レイとノアがロイドをかばうようにヴィクトリアと対峙し、剣を振る。


「行け!人形たち!」


 ノアは強い人形を持っているわけではなかった。しかし、耐久力に優れた小さな人形をいくつも同時に操っていた。ツヴァイも対応に困っている。


「レイ。彼女が私と同じタイプなら、人形に繋がっている糸さえ切ってしまえば、勝てる。」


「あぁ。一本だけでも切ってやるぜ。オラァ!」


 レイがツヴァイに向かって斬りかかる。ヴィクトリアで防ごうとするのを、ノアとロイドで弾き返す。


「舐めんな……よ!」


 しかし、その攻撃はツヴァイには届かなかった。ツヴァイは華麗に身を翻し、私たちの背後に立った。そして、ヴィクトリアで攻撃してくる。


「あぶ、ない!」


 ロイドと私の体でヴィクトリアを受け止める。が、伸びてくるヴィクトリアの鎌は防ぎきれなかった。


「オーキス、お前右腕が……。」


 そう。見事に切られていた。


「これでトドメだ!」


 ツヴァイが畳み掛けるように攻撃してくる、そう思ったときだった。


「う、うわぁぁぁ………!」


 ツヴァイが急に頭を抱えて倒れ込んだ。まるで、自分が壊れてしまうかのような恐怖に陥っているのがわかった。


「とりあえず、今がチャンスだ。俺の人形たちで目くらまししよう。」


 そう言ってノアが人形から煙幕を出す。私たちは、撤退して作戦を考えることにした。



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