序章

 私が初めて見たのは、あの人の顔でした。私を"つくり"、育ててくれた人。


 今では最も愛すべき人。


「君の名はオーキス。死に別れた彼女の名前さ。」


 私はオーキス。


「君にはあたたかい心をもつ人形になってほしい。それが私の研究の最終目標だ。」


「最初から人間の心を持つのは難しい。だから、君には感情を与えた。」


 感情があれば、心がわかるの?


「君は、人と交流できる。見れる、話せる、聞ける。それで人間を理解して欲しい。」


 そんなことを言ったあの人は、今はもうこの小屋にいない。


 彼は、私に優しく語りかけた。


「僕の研究で作ったゴーレムを国が戦争に使うらしい。止めなければいけないんだ。人の争いのために作ったのではないのだ。」


 彼は身支度を、大きな荷物を持ってそう言った。


「行ってくる。」

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