Δファンタジア

藤宮なるる

READY

第1話 プロローグ

202X年 アフガニスタン 山岳地帯

機体:MH-60Mブラックホーク

部隊名:第1特殊作戦部隊 デルタ分遣隊 ゴーストチーム

作戦内容:失踪したNavySEALsチーム6のヘリの捜索

指揮官:スケアー



「全く...我が軍は年寄り使いが荒い...」


 白髪で40代後半くらいの、葉巻が似合う白人男性。この隊の指揮官である『スケアー』が愚痴をこぼすと、隊員たちは笑った。


「ハッハッハッ!何を言ってるんですか!」


 ここ数回のお決まりネタだ。スケアーもその強面に笑みを浮かべる。


「この前、おやっさんに格闘訓練でぶん投げられたのまだ痛いっすよ...」


 俺も俺もという声があちらこちらできこえる。


「経験値で負けてたまるものか。もっと訓練に励め」


「「「へーい」」」


 やる気が無さげだが、俺はこいつらを世界一の兵士だと思っている。世界一信用し、世界一の絆を誇る。デルタ、SEALs、他様々な部隊から掻き集めた精鋭達は、どんな困難も打ち砕く。


 俺は世界中で任務をこなしてきた。ボスニア、アフガン、イラク、同盟国内でも活動した。国家の根底に関わる任務ばかりだ。多くの出会いと、別れが、俺をより良い兵士へと成長させた。


 窓からは砂嵐で茶色く濁った風景。本来なら、ヘリは飛べないくらい激しく吹き荒れる。


「イラクを思い出すな...」


「ほんとですね。この激しい砂嵐」


「あれは酷い作戦でした。二度としたくない」


「俺達は、任務をこなすしかない。これが俺達の『正義』なんだ」


 任務をこなし、テロリストを倒し続ける。俺はこれが自分の正義だと思う。子供の頃から考え続け、いまだに答えが出ない『正義』

 米軍1のスナイパーと言われても、『恐怖の男』と言われても、『正義』が見つかることはなかった。

 人を殺すことも、拷問にかけることも。最早なんとも思わなくなったが、その疑問だけが心に引っかかって取れなかった。


 そして、心の底で思っているのだ。いつか平和な世界が、きっと訪れる筈だと。正義は勝つんだと。

 心の奥底に眠る少年の心は、本人すらも気づいていなかった。


「そろそろ目的地だ。準備しろ」


 隊員たちに準備を促し、自分も準備を行う。ボルトを引き、薬室を確認。簡易的だが、銃の点検は怠らない。

 砂嵐で外はやけに視界が悪く、音もうるさい。

 準備していると、砂嵐とは思えない轟音が鳴り響く。窓から外を覗くと、地響きのような凄まじい轟音と共に、ヘリの前方に巨大な穴がポツリ。暗く不気味な穴は空間を喰うように広がる。


「なんだ...あれ...」


 驚きも束の間、パイロットは恐怖に顔を痙攣らせる。機体が穴に引っ張られて行くのだ。


 異常を知らせるブザー音が鳴り響く。必死に操縦するパイロットが、墜落を確信する。


「ショックに備えろぉぉぉ!掴まれぇぇ!!」


 揺れる機体。身体にかかるGが、急激に上昇する。横に、縦に、身体が飛ばされる。


 俺は神を信じないが、この時ばかりはあまりの出来事に思う。おお、神よ...と。私は死ぬのかと。


 強烈な重力に引かれて、機体は回転しながら穴に呑み込まれる。視界が一瞬真っ暗になり、次の瞬間には機体は地面に叩きつけられた。

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