『マイ・フェア・レディ』

 この前、ちょっとした事件があった。いつも僕の家にリハビリに来てくれる若い先生がいるのだが、その人とこんな会話をしたのだ。

「先週、この家にお邪魔した時、山本さんと映画の話をしたでしょう」

「そうでしたっけ」」」」

「ええ、『マイ・フェア・レディ』の話を熱く語っておられたでしょう」

 何の話をしてるか、さっぱり分からなかった。僕は古い特撮の話をすることがちょくちょくあるが、大抵は特撮映画だ。ましてや『マイ・フェア・レディ』の話なんてした記憶がない。だいたい、一度も見たことのない映画だ。(ああ、主題歌ぐらいは知ってるぞ。「スペインの雨は高地に降る」とかいうやつだ)

「ええっと、僕はそんなに『マイ・フェア・レディ』の話なんてしましたっけ」

「はい、すごく熱心に」

 彼の勘違いが明らかになったのは数秒後のことである。




 『マイ・フェア・レディ』じゃなかった。『レディ・プレイヤー1』だった。 

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