月光と水面

HaやCa

第1話


 今を見て、前を歩け。先生はみないう。決められたレールの上、なにがそんなに楽しんだろう。わたしはちっとも。

 今日は冬の定期試験。もちろん勉強はしてない。

 がんばらなくたってレールから外れることはないくらい、成績はよかった。

「なあ淳紀、学校終わったら遊びにいこーぜ」

「いいよ。わたしもそんな気分」

 友達の唐沢はおバカで、先生も頭を抱えていた。

唐沢には唐沢の価値観があるのに、そのひとつも理解しないで。


「ゲーセンてほんとつまんねーな」

「来るんじゃなかった?」

「ああ。こんなとこじゃなくてもっと、遠くの世界にいってみたい」

 唐沢は椅子の上であぐらをかいていう。

「わたし、その方法知ってるよ」

「マジ?!」

「マジ」

 急に肩を揺すられちょっとドキッとした。

 そっぽを向いて気持ちを隠す。

「教えてあげてもいいけど、条件がある」

「どうせ勉強しろ、だろ? はぁ」

「あんたのこと思っていってんだから」

「お前もそっち側なんだな。アイツらとは違うと信じてたのに」

 アイツラ、唐沢がいつも毛嫌いしている先生やご両親の顔が浮かんで消えた。

「わかるよ。あんたの気持ち。でもさ、勉強しないと将来ものすごっく困る」

「知らねーよ。俺は今だけで十分。何も考えたくない」

 呆れたように椅子から飛び降り、背を向ける。

「じゃあ、あっちの世界にいってわたしと勉強する。それならどう?」

 足が止まる。

「お前、そんな覚悟あんのかよ。二度と戻ってこれねえかもしれないのに」

「いいよ。わたしも飽き飽きしてたとこだし」

 わたしは不敵に笑って見せる。唐沢の目は息を吹き返した。

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月光と水面 HaやCa @aiueoaiueo0098

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