腐女子芽以(1)
芽以がそういう世界を知ったのは中学一年生の時だった。
友だちから借りたその漫画を始めは理解できなかった。
登場人物たちが薄いひょろひょろした男の子たちという点では今までの少女漫画と同じだったが、その男の子たちがいつも自分と重ねていた主人公の女の子に好きと言ったり抱きしめたりせず、別の男の子に好きと言ったり抱きしめたりするのだから。
「なんで男と男がキスしてるの!?」
キスシーンの先に至っては、数日間それが頭から離れないほど強烈で、知ってはいけない世界を覗いてしまったという罪悪感に悩まされた。
漫画を貸してくれた友だちにそのことを打ち明けると、彼女も同じだったという。
「でも今人気ある漫画はみんなホモ入ってるよ」
そう言う友だちが自分よりずっと大人に見えた。
それから三年、芽以は二次元の妄想世界が生き甲斐の立派な腐女子に成長した。
高校生にもなると彼氏のいるクラスメイトの女子もたくさんいたが、芽以の属する腐女子グループと彼氏のいるようなリア充グループは交わることはなかった。
芽以はリア充女子たちを少しも羨ましいと思わなかったし、クラスの男女のカップルのあれこれなど、想像するだけで、おえっとなった。
二次元の男同士の恋愛こそが芽以の理想だった。
その妄想生活に青天の霹靂のような事件が起こってはや半年。
芽以の世界の神は“あの人”になった。
芽以の漫画コレクションの中でもひと際お気に入りの主人公が目の前に現れたのだ。
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