39.ミトカ5/スキル
「ところで、前から気になってたんだけど、ミトカって、朝俺が起きる前に朝食準備しているけど、俺が起きてなくても独自で動けるってことか?」
「はい。そうですね。精霊王として独立して動けます。史郎の意識の覚醒の有無にかかわらずです。そして、私の魂のインターフェースは史郎になっています。なので、史郎経由での史郎のスキルを使った魔力操作による、自身の制御という形になっていますね」
ミトカはもともと史郎が作ったAIであり、魂が無かった。その状態からまったく新しい魂を作り出すという試みをフィルミアが行ったのだが、その際に既存の魂の一部を借りるという方法を試し、史郎の魂がその実験台なのだ。もちろん史郎はそんなことは知るはずもないのだが。
「……えらいまた複雑だな。ん? ということは、ミトカは俺が持つすべてのスキルを使えるってことか?」
「はい、そうですね……すべてとは言いませんが、史郎の持つスキルに加えて私自身の精霊王としてのスキルの両方が使えます。つまり、常に史郎より強いということですね」とミトカはいつもの悪戯っ子の笑顔を史郎に向けた。
もっとも、スキルが使えるからと言って、そのスキルを使いこなせるかどうかは別の問題なのだが、ミトカは史郎には黙っているのであった。
「じゃあ、もう一つ質問。なぜそんなに自然で成熟した人格なんだ?」
「……」
「いや、言い直そう。なぜこんな短時間でそこまでナチュラルに俺と会話ができるほどの人格が形成されうるんだ? 魂付与がそのまま成人の人格のはずはないからな」と史郎は聞いた。
「……へー、さすが史郎、よく気が付きましたね」ミトカは意味深なほほ笑みを浮かべた。
「ふふーん、当然だ。ミトカは俺が作ったんだぞ? だから、俺の限界も知っている。俺が作ったミトカは素晴らしいできだと自負しているが、それはしょせん地球の科学技術レベルでのことだ。そして、フィルミア様は「魔術生命」そして「疑似人格」と言っていた。それが俺の設計と同じだとすると、今のミトカはそんなレベルをはるかに凌駕している。転生でもした魂が宿っているというのでもあれば納得するが、そうでもないんだろ? ミトカがそんなに自然な人格を持つなんて単純に魂だけの問題じゃない、何らかの工程が入っているはずだ」
「……ふふふ、さすが私を作っただけのことがありますね。転生などの魂ではないことは保証できます。私は正真正銘史郎が作ったAIが自我を持ったものです。このナチュラルさを可能にした手段については……、そうですね、今はまだお教えできないとしか言いようがないですね。時期が来れば説明できます」とミトカは少し残念そうにしながら答えた。
「ふむ、フィルミア様に止められているのか、何らかの制限がかけられているのか……。わかった、今はそれで納得しておくよ」と史郎は潔く引き下がったのであった。
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