37.スキル考察3

「さてと、もう一度必須スキルでまだ取ってないものを検証しようか」

 と、史郎はつぶやき、例の一覧をチェックした。



―― マップ


「史郎、完全記憶でデータストレージのように使う方法で可能ですね。探知系の空間把握で地形情報を記憶し、鑑定結果などの情報や、私からの情報を組み合わせて地図情報としてまとめていくことができます。常時発動でどんどん記録しましょう!」


 と、ミトカがなぜか張り切って説明してくれた。


「それで、空間把握と地形情報はスキルか?」


「はい、探査で3Dを意識して地形を把握するように使うといいです」


 史郎はそう言われたので試してみる。


「いつもの探査で、地形や植生に関するエンティティの検索っぽい発動かな?」


 史郎はそうイメージを強くして探査を発動した。


 魔力が広がっていく感じがして、半径200メートル程の地形を感じ取り、そのエンティティリストをもとに、シーングラフを把握、記憶する。そのデータをもとに3Dデータ化、UI出力として3Dのイメージを脳内に再現するようにした。なお、必要に応じて地質や植生、魔獣の有無なども記録する。


 ――『【3D地図】レベル1 を取得しました』


「おー、できたできた。3Dなんだ……」


 以降、史郎は常にこのスキルを発動、着々と地図情報を蓄積していくことになった。



―― 千里眼



「史郎、これは私が代わりに使っていたのですぐ取れるはずです。直接見なくても、任意の――といっても、探査範囲内ですが――視点から見る機能ですね。見たい場所を思い出すか目視し、そこを視点として見るイメージです。見た映像は、UIモジュールとして、記憶UIか第三の視覚UIで再生という方法でできるはずです」とミトカが説明した。


「なるほど。第三の視覚UIがなんかいいな」と史郎。


 第三の視覚UIとは、もう一つの視点が独立して認識できる強力な機能だ。


 たとえば、普通人間は手が二本当然のように使える。ここにもう一本同じように使える手があるとして、それがどのようなものかは比較的想像しやすいだろう。さらに、あたかも最初からあったかのように手を動かすことが可能だとしたら、その有用性は計り知れない。


 その感覚が分かれば、同じように、あたかも最初からあったかのようにもう一つ視点があることも受け入れられるはず。

 それを受け入れることができれば、鮮明な千里眼が可能なのだ。

 もっと簡単に言うと、パソコンにもう一つディスプレイをつなげた、デュアルディスプレイみたいなものだ。

 ちなみに、記憶UIだと、昔見た景色を思い出すかのように視える、という感じなので、詳細な映像には向かない。


 ――『【千里眼】レベル1 を取得しました』

 ――『【第三の視覚UI】レベル1 を取得しました』




「これって、もしかして第三者視点機能みたいに使えるよな?」と史郎がふと気づく。

「そうですね、戦闘時に有利になるので、試してみるといいかもしれません」とミトカ。


 第三者視点とは、自分自身の後方上あたりから自分を見下ろす感じの視点で、周りの状況を把握するのに有利だ。ゲームでキャラクターを動かしているようなものなのだ。それが自身の視覚と同時にあれば、戦闘に有利になる。


「後ろ2メートル、上方2メートルくらいかな……?」と、史郎は千里眼を発動する。もちろん、第三の視覚UIで。すると、通常の視覚とともに、自分を見下ろす視覚が得られた。

「おー、これは不思議な感覚だな……。慣れるまで時間がかかりそうだが、しばらくは常時発動しようか」と史郎は思ったのであった。


 ――『【第三者視点】レベル1 を取得しました』




「さらに言えば、3D地図の情報も第三の視覚で見れるのか?」

「……そうですね。第四とも言えますが。史郎、意識レベルを上げてコア数を増やせば可能ですね。常に視点を幾つも見るというのは……大丈夫ですか?」とミトカが心配した。

「いやまあ、面白そうだし。これこそ地球では無理だろう?」


 システムの仕組み上、3Dモデリングソフトウエアのように複数の視点、つまり複数の「カメラ」を設定し、同時にレンダリングして表示するようなものだ。

 フィルディアーナの世界では、魂の外部I/Oで複数視点をサポートしている。


「俺の設計でも、理論上はそう設計したけど、それが実感として使えるのは不思議だな。脳の処理、いや、正確には精神の処理か(?)その柔軟性が良くできているじゃないか。一度フィルミア様に精神処理エンジンについて聞かないとな」と史郎は久しぶりにエンジニアとしての興味を思い起こしたのであった。



―― 察知


「地図や探索のスキルの事を考えていて思い出したけど、それって能動発動スキルだよな」と史郎はふとつぶやく。

「ああ、そうですね。常時発動の察知系があるといいと思います」とミトカが答えた。


 必要に応じて使おうという意志で発動するのは、「能動発動スキル」と言われる。通常のスキルはこれだ。

 対して、常に発動し続けるスキルは「常時発動」スキル、何らかのトリガーで自動発動するスキルは「受動発動」または「自動発動」スキルという。

 なお、「受動発動」は、攻撃に対する自動防御、「自動発動」は、一定の条件での自動発動で、微妙に意味合いが異なる。


「周りの魔力や気配を探知するイメージで常に探索を発動し続けるとスキルが得られると思います」とミトカが説明する。

「なるほど、じゃあ、訓練がてら日常的に使おう」と史郎は答えた。

 

 この後、史郎は常に探索を使い続けた結果、無事スキルを得ることができるのであった。



 ――『【気配察知】レベル1 を取得しました』

 ――『【魔力察知】レベル1 を取得しました』

 ――『【危険察知】レベル1 を取得しました』




―― 偽装


「史郎、ステータスの偽装ですが、これは簡単です。ステータスシステムでパブリックプロファイル機能があるので、その情報をセットすることで可能です。この国の平均的な冒険者のステータス値と簡単なスキルのみ見えるようにしておきます」


 と、ミトカが教えてくれた。そして、


「あと、魔力操作のレベルを5以上まで上げて、外部に漏れる量を少なくする技術を習得すると、見かけ上の魔力が少なくごまかせるようになります。魔力に敏感な人たちに魔力量の多さがばれるのを防げますね」


「ほぉ、なるほど。ふだんの生活で、魔力が体外へ勝手に出ないように意識しておくことにしよう」と史郎は決めたのであった。

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