28.神術

「さて、今日は神術の検証をしよう」


 次の日の朝も、ミトカが作ってくれた朝食を食べた後、史郎は最大の懸案である神術の検証をすることにした。


 神術とは、神力を使って使う魔術のことで、神力というのは、魔力と気力を合成して発生させる力だ。ただ、その合成というものが曲者で、簡単にはできないことになっている。

 難易度が高いということは、それだけ高度な魔術と気術を扱えるということを意味し、神術まで扱えるとなるとかなり高難度な魔術を発動することができるようになる。


 神力は、世界の構造であるシーングラフのより深い操作だけでなく、それにつながる魂までへも接続できるので、精神系の魔術、時空間系、重力系、魂魄系、魔術生命系といった通常の魔術では不可能と思われるような魔法には必須の技術だ。


「設計上は、魔力と気力を同じ密度・波長で合成するってことだったけど、それを意志力で調整しながら維持するんだよな」史郎は聞いた。


「そうですね。気力でも結構調整が難しかったので、この合成には時間がかかると思うので修練あるのみですね」ミトカは淡々と答えた。


「そうだな。気力操作の時はかなり時間がかかったから、神力操作の習得にはもっと時間がかかりそうだな。根気よくする必要があるか……」


「史郎、その前に神魔術の前提として、魔術レベル2と気術レベル3が必要ですね。史郎の魔術レベルは2を超えていますが、気術レベルは1のままです」


「ああ、そうか。気術レベル2は、気の放出と気体相転移だったっけ? で、レベル3ってことは……粒子相転移で気弾か?」


「そうです」


 やってみないことには始まらないな、と史郎は考え、まず丹田に意識を集中して気力を発生させ、体に纏うことを意識する。そして手から気を放出することをイメージする。


「……」


 魔力の時と同じようにイメージしながら気力を動かそうとしても、なかなかできない。魔力の時はイメージだけで結構簡単にできたのになー、などと考えていると、ミトカがアドバイスをする。


「史郎、気力はもっと集中が必要です。心身一体感を維持するようにしてください」


「あぁ、そうか。気術は心と身体の術。一体感と集中がいちばん大事なんだったな」


 史郎は、座禅のように座り直す。

 意識をつま先から始め、だんだん体の上まで上げる。

 頭頂まで巡らせた後、体の隅々まで全体に意識を持ち、意識を無の境地に導くようにした。


 そして、全身から気力が気体のようにじわじわと染み出すように放出するイメージを持った。


 ――『【気力防御】レベル1 を取得しました』

 ――『【集中力】レベル1 を取得しました』

 ――『【瞑想】レベル1 を取得しました』


「おー、新しいスキルだな。これらは気術レベル2かな?」


「そうですね。気力を体の外部にわずかに放出することによって防御壁になります」


「それはいい。すこしでも防御手段が増える方がいいからな。それで、気力弾だが、やっぱりあれだよな、いわゆる気功砲みたいな……?」


「ふふふ、そうです」


「なんか、それはできそうな気がする」

 と、史郎は意気込んだ。


 気力防御の状態で、意識を集中する。意識レベル200は必要だからと、史郎はとにかく集中した。

 何だか今ならできるような気がすると思い、片手を出す。

 さらに人差し指を突き出し、その先から気力の玉が飛び出すように意識した。

 そして適当なターゲットに向けて、ハッと気力を飛ばした。


 すると、薄く光る透明な球が飛んで行って岩にぶつかった。

 ぶつかった瞬間、球は破裂するわけではなく、スゥッと消えるように岩に吸収されたかと思うと突然岩が崩れた。



 ――『【気力弾】レベル1 を取得しました』



「これはなかなか不思議な攻撃だな? とにかくこれで気力レベル3だよな?」

「そうですね。おめでとう、史郎」ミトカは笑顔だ。


 よし、では次は神力の制御に挑戦か、と意気込む史郎であった。




     ◇



 神力の発生は、設計上は魔力と気力を同じ密度・波長で合成し、それを意志力で調整しながら維持することによって実現される。

 具体的な手順としては、まずは魔力を体中に浸透させ、静かな液体状を維持する。しばらくその状態で瞑想し、そして、同時に気力を発生させる。その気力を体中に浸透させながら、同じように液体状をイメージして維持する。


 この二つの力が、液体状として均等に交じり合わさるように、波長としては同じ波長で重なるようにイメージして、一つの力になるように意識することにより神力を発生させることができるのだ。


 そう思いだしながら、史郎は実際にそれを実現しようとするのだが、


「……」

「……」


「いや、これは難しい。何か混ざる気がしないし、波長も同調する気がまったくしない」

 と史郎は落ち込んだ。そして、

「俺はなぜこんな設計にしたんだろうか?」と後悔した。


「史郎、これは史郎の設計ではありますが、神が作った世界の事実でもあります。自分を責めても何にもなりませんし、努力あるのみですよ」とミトカは史郎を慰めた。


「ははは、そうだな。ひたすら練習だな」


 その後3時間ほど意識を集中して試してみたが、結局うまくいかず、また明日頑張ろうと思う史郎であった。




 ==ステータス確認==

 神川 史郎 人族(?) 男性 17歳  

 レベル:17

 職業:エスエー

 生命力:1001/1001

 魔力:142/152

 気力:185/193

 物理攻撃力:429

 物理防御力:429

 魔法攻撃力:1076

 魔法防御力:429

 器用:590

 敏捷性:914

 運:100

 状態:超健康

 属性:無

 称号:【女神フィルミアの使徒】

 プラグイン:【初級魔術精霊】

 ユニークスキル:【イデア】レベル1、【ミトカ】レベル1、【即死耐性】レベルMAX


 スキル:【魔術】レベル3、【魔力感知】レベル3、【魔力操作】レベル3、【超記憶】レベル4、【概念言語】、【物質化】レベル2、【探査】レベル1、【鑑定】レベル1、【インベントリ】レベル1、【透明化】レベルMAX、【隠密】レベルMAX、【魔力制御】レベル1、【土魔法】レベル1、【水魔法】レベル1、【氷魔法】レベル1、【風魔法】レベル1、【火魔法】レベル1、【雷魔法】レベル1、【障壁】レベル1、【直観】レベル1、【予感】レベル1、【立体機動】レベル1、【錬成】レベル1、【形成】レベル1、【精密魔力操作】レベル1、【実体化】レベル1、【加熱】レベル1、【気術】レベル1、【気力感知】レベル1、【気力操作】レベル1、【身体強化】レベル1、【身体制御】レベル1、体術】レベル1、【気力纏】レベル1、【剣術】レベル1、【槍術】レベル1、【棒術】レベル1、【結界球】レベル1、【サイコキネシス】レベル1、【気力防御】レベル1、【集中力】レベル1、【瞑想】レベル1、【気力弾】レベル1

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