没落のトライアンフ

狛犬えるす

《MARIANNESS OUTLINE》






 人類が恒星間を飛び回り、真空漆黒の広大なるフロンティアを駆け回るようになって数世紀。


 わずか一世紀前に開発と入植が行われた惑星マリアネスでは、その豊富な地下資源と野心故に戦の炎が絶えることはない。


 凍結される玉座を戴く《シュリーフェン帝国Schlieffen Imperium》は、テラフォーミングと惑星開発に大きく寄与した男が立ち上げた古く真新しい権威を、今もなお振るい続けている。


 その野心の発露は皇帝が凍結睡眠中であっても宰相の手によって管理され、今は戦争経済の信奉者である暴力的経済屋のザーゲビールがその玉璽を握っている。



 しかして、傍若無人にふるまう権威の誕生に対してマリアネスの開発に乗り出した企業たちは自らも国家としての対面を築き、《マリアネス連合Marianeth Union》が生まれた。


 帝国と同じくして己の母体である民族を依り代として生まれたこの国家連合体は、搾取する巨悪に対する正義を標榜してはいるが、彼らもまた利益追求主義者という搾取する側の体質を捨てきれずにいる。



 そうして、企業と言う組織から産まれた二つの集団の狭間に、山脈と砂漠に隔てられた異なる二つの集団が声をあげる。


 ラテンの末裔たる植民団から生じた《パーシュミリア連邦ParthMillia Federation》は、その楽天的な体質とは裏腹に、資源と土地に恵まれ、口と手を動かすことで両国の緩衝地帯として生存を図っていた。


 しかし、それは帝国の狂気的な野心と戦争経済の前では役に立たず、今では玉石混交の帝国貴族たちの砂場となっている。



 そして、この物語の始まりは平原を駆ける騎兵たちの末裔、《ニルドリッヒ共和国Niederich Republic》の滅亡から始まる。


 シュリーフェンの惑星開発計画に相乗りしたかの民は、帝国低地領ニーダーライヒとしてかつては帝国臣民であったが、契約を盾にして延々と搾取を続ける帝国に反乱を起こして独立を成し遂げた。


 彼らの掲げる〝鈍色の平和主義〟はパーシュミリア連邦とマリアネス連合との同盟あってのものだったが、代替わりした新たな与党は軍備の劣るパーシュミリアを見限り、そして今、自らの国をも失おうとしている。



 ―――これは、滅亡の最中に目覚めた、目覚めるべきではない、の話である。

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