巻頭「9インチの釘 II」
これは、遥か未来のお話。
人類は既に惑星再生技術テラフォーミングや超光速移動や通信能力を手にし、数々の惑星へと入植しその版図を広げていた。
その内の一つ、惑星マリアネスも例外ではなかった。
地球人類の管理下によって、かつて入植を果たした惑星。
マリアネスは地球型惑星の一つで、比較的低規模なテラフォーミングで地球人類の植民惑星になった。そして開発が進むと、マリアネスには地球と比べ段違いの資源があることが判明する。
初めに入植した開拓団を差し置いて、地球連邦政府直轄の企業連合体と、その連合体の代表であるシュリーフェンという男が、その利益と開発を代表することになった。
数々のレアメタルの鉱脈は、宇宙開拓に是が非でも必要な戦略物資だった。
ウランやプルトニウムといった原子力技術に必要不可欠な物資も、マリアネスには豊富にあった。
しかし、これがマリアネスに火種を産むことになると、地球連邦政府は考えていなかった。
――はじまったのは、戦争だ。
企業連合体代表のシュリーフェンは「シュリーフェン帝国」の建国を宣言。
地球連邦から供給されたテクノロジーを使って、入植していた有象無象のほか自治体に帝国資産の強制徴収を目的とした宣戦を布告。
自治体の資源採掘を『帝国の領土の不法な搾取』と宣言し、武力で惑星統一を開始する。
しかし、それに反抗する者たちもいた。
この星で生まれた組織であるマリアネス地上開拓観測団と、地球より入植した玉石混合の中小企業独立開拓団が連携し反帝国連合体「マリアネス連合」が設立される。
マリアネス連合は、『資源採掘の安定化と、この採掘権を侵犯する可能性のある国家への抑止力、連帯した国家防衛により連合体としての防衛力を教示するため』に自衛権の行使を全会一致で可決、シュリーフェン帝国との戦争状態に突入する。
惑星をまたぐ勢力同士が衝突すればこのマリアネスは荒廃する。そう思われた。
そこで、地球連邦が調停に入った。
彼らは紳士的な、あるいは悪魔的な無慈悲なルールをこの戦争に設けたのだった。
それは《現在この惑星に居住する住民及びその子孫のみが、この惑星の資源を巡る戦争に参加する》と言うものだった。
つまり、地球はこの惑星の戦争に対する調停以外の一切に関与しない、と。
かくして、シュリーフェン帝国とマリアネス連合は飽くなき闘争へと身を投じ、戦い続けることとなってしまった。
彼らはいびつな技術体系から生み出された戦闘兵器を駆使し、何を生み出すのだろうか。
この物語は、シュリーフェン帝国とマリアネス連合の戦いが始まってから三十年が経過した両国の狭間。
そこに存在した、一つの共和国の滅亡から始まった。
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※本文は外星言語である統一マリアネス語で書かれた文章を日本語訳したものであり、換算可能な単位は読者の理解を容易にするため、すべてSI単位系に置き換えられている。
また、翻訳困難な曜日・月の表記は発音の近いカタカナ、あるいは訳語で表記してある。
原語表記はそれに類するデータの入手が困難なため、付録Aを参照されたし。
(業者追記α:付録Aは紛失しております。ご理解ください)
※二 ミーム汚染による人的被害を回避するため、各武装・軍事組織が行ったミーム兵器に関する情報、あるいはその存在をほのめかすような記述、ミーム兵器そのものに関する情報はすべて削除されている。
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