言の葉

@yoll

契約

「鳥は空を飛び自由を得るためにその腕を捧げた。では、人間たる君はもう一度自由に生きるために何を捧げる?」


 悪魔は少年に語りかける。


「僕の口をあげる」


 少年はそう答えた。


 少年は後悔をしていた。

 自分が傷つけてしまった大切な少女の事を。その口から飛び出した言葉という凶器で傷つけてしまった大切な少女の事を。


 そんな大切な少女を傷つけてしまった言葉を吐き出した自分の<口>を、まだ幼く純粋な少年は許すことが出来なかった。


 今、正に死を向かえようとした少年の脳裏に浮かんだのは、もう一度大切な少女に謝りたいというたった一つの想いだけだった。


「宜しい。では、君のその<口>を頂こう。代わりに君は生きる。契約は交わされた」


 悪魔はそう言うと少年に向かって膝を折り、恭しく頭を垂れた。

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