愛懇

筆屋 敬介

愛懇


握りしめた指先に


いつも、それはありました


もう途切れてはいるけれど


触れるとほんとに終わってしまう


触れなければ終わらないんだ




春はそよ風とともに


夏には眩しく輝いて


秋、いつもと違う横顔も


冬の寒ささえ楽しむ笑顔を


たくさん貴女はくれました




また今年も一緒に見よう


また今年も一緒に笑おう


また今年も一緒に





触れると貴女につながっていた


貴女の姿を切り取ったそれを


哀しい知らせを


見たくない


見なければ貴女はいつまでも生きている


見なければ






握りしめた指先に


いつもそれはありました


最期の言葉を


最期の笑顔を


見たい


見たくない


見たい







だから僕は


そのアイコンを


見えないところへ隠しました



いつもあったその場所に


ぽっかり空いたひとつだけの


哀痕。






※※※

課金していた萌えスマホゲーが運営終了した時の詩です。

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