第39話

「ええ、そうよ」


 はっきりと言い放った。

 瑞浪あずさは私の疑問を、そんなことどうだっていいと言わんばかりに。

 はっきりと答えたのだ。


「私が考えたプランに、BMIが上手く乗っかってきてくれた! それは私だけではなく、プログラムのチームが皆考えていたことよ! その先に生まれる物は人間の原罪が洗い流された状態! とどのつまり、人間が人間としての真の価値を生み出した瞬間! BMIを埋め込んでいない人間については、申し訳ないことだけれど、それは『選択』によるものだから致し方無し。いずれにせよ、私たちにとって救われる人間が一人でも居るならばそのプログラムを起動することは間違っていないとはっきりと言えるわ」

「そんなことさせない」


 私は銃を構える。

 かつての十年前の友人に。

 かつて志を共にした友人に。

 瑞浪あずさに。


「今更私を撃っても無駄よ。だってプログラムは既に実行されているもの」

「……何ですって?」

「私は、プログラムを実行させた。三十分もすればBMIを接続している人間は全員メロディを耳にして、意識を肉体から分離させることが出来るはず。その言葉の意味を、きっとあなたも理解できていると思うのだけれど。私たちにとっての悲願を、そう簡単に諦めてたまるものですか」

「あら、そう」


 しかし、私は銃を構えるのを辞めない。


「だから、私を撃つのは見当違い。強いて言えば、プログラムを走らせているサーバを撃てば済む話かしら。それとも、もう諦めたのかしら? 私と一緒の意識に眠ることを嫌っているつもり? だとしても駄目だよ。三十分もすれば、意識は統一され、やがてBMIを埋め込まれている人間は全員が――」

「そういうことじゃない」

「え?」

「そういうことじゃないんだ」


 私は、照準を合わせる。

 瑞浪あずさの心臓に。

 そして、私は瑞浪あずさの心臓を貫くように、銃弾を撃ち放った。


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