第15話 リボルト#03 一喜一憂の新歓パーティ Part5 絆、決意、そして野望

「ところで、秀和」

 突然、哲也の声が響く。その顔にはさきほどの明るい笑顔がない。

「どうした哲也? 急に改まって」

 俺は流すことなく、真剣に彼を見つめている。この時の哲也は、大体何か大事なことを話す前兆だ。親友としてふざける余裕はなさそうだな。


「君の転学が決まった時に、腕時計らしきものを渡されなかったか?」

「腕時計? 藪から棒だな……まあ、確か荷物の中にあったはずだけど……それがどうかしたのか?」

「いいか秀和。それを絶対につけるんじゃないぞ」

 哲也の低くなった声が、俺の心臓を引き締める。どうやら事態が深刻だな。

 彼は左腕の袖を捲ると、そこには近未来風の腕時計が装着されている。


「これは一見普通の腕時計に見えるが、先生たちの命令に反抗すると、電気が出る仕組みになっているんだ」

「なんだと!?」

 思わず耳を疑う。この学校って意外とえげつねえことをしやがるな、おい。なに考えてるんだ、教員のやつらは?

 最初はドッキリなんじゃないかと僅かに期待していたが、哲也はこんな場面で冗談を言うようなやつじゃないと俺は知っている。

 そして、女子三人の反応が更に俺の疑惑を確信へと変えた。


「そうなの! ビリビリしてて凄く痛そうなんだよ!」

「悲鳴を上げる生徒もいらっしゃいました。見るだけで怖くてたまりません」

「私たちのクラスには先生がいないのは幸いですが、いつか私たちもあんな風になるんでしょうか……」

 三人の目線は明後日の方向へと向き、とてつもない憂鬱感が漂う。

 おいおい、マジかよ……そんな話を聞いてねえぞ! くそ、息子をこんな危険な学校に転学させて、一体何を考えてやがるんだ、親父のやつは……!

 数え切れない思惑が、俺の頭の中を旋回している。どうやら、ここは俺が思ったより複雑な事情があるみてえだな。

 さて、鬼が出るか、じゃが出るか……面白くなってきたぜ。

 

 目前に訪れるこの状況は、災難というべきか、挑戦というべきか。だが、他の選択肢が用意されていない以上、俺たちは立ち向かうしかねえ。

「へっ、電気だろうが何だろうが、そんなんで俺たちをビビらせるつもりか! いいかみんな、自由を取り戻すために、俺たちは絶対にここから出て行くぞ! 約束だからな!」

「ふん、相変わらず思い立ったことを後先も考えずに言うんだな、秀和。まあ、そこは君らしいところだな」

 腕を組んでいる哲也は両目を閉じ、深みのある笑いを浮かべた。俺への分析はいつも通り、理性かつ的確だった。

「そうだね! 私たちには、まだまだ叶えてない夢がた~くさんあるんだから! こんなところで諦めるものですか!」

 俺の声で気合を入れ直した菜摘は、両手をぎゅっと握ってガッツポーズを取っている。その眼差しの先にあるのは、未来への憧れだ。

「ふふっ、さすが菜摘さんですね。アイドルの私も負けられません!」

 菜摘の真似をして、同じくガッツポーズを取った冴香。職業こそ違うが、同じ高みを目指すライバルとして、その意気は決して無駄ではない。

「みなさん……凄いですね。何だかわたくしまで、胸の奥から熱い炎が感じるみたいです」

 俺たちを見守っている千恵子は、手を自分の胸に当てて、その温もりを感じ取ろうとしている。


「それは、九雲さんにも守りたいものがあるからよ」

 玄関の奥から、聞き覚えのある声が響く。俺たちは声がした方を振り向いてみると、そこには片手を腰に当てている美穂が立っている。強気な姿勢とその真剣な顔が、薄暗い廊下でもはっきりと見えている。

「み、美穂ちゃん!?」

「は、春谷さん……!?」

 驚き菜摘と千恵子。無理もない、いつもあんな不真面目そうな彼女がここに現れるなんて誰も思わなかっただろう。俺を含めてな。

「アタシだって、早くここから出て、菜摘と一緒にモデルのお仕事をしたいし……あと、さっきは勝手なこと言って悪かったわよ、委員長」

 さっき千恵子を責めたことで後ろめたさを感じたからか、目を逸らしながら、力強い言葉を言い放つ美穂。だが、そうやって自分の誤ちを認めることも不可欠なんだ。自分の成長へと繋がる、とても大切な一歩だからな。


「美穂ちゃん! よかったね、九雲さん」

「は、春谷さん……ありがとうございます!」

 感動した千恵子は、喜びのあまりに両手で口元を隠し、涙が瞳の中で波打つ。

 しかし、これはまだ熱い展開の一部に過ぎなかった。

「自由を取り戻す、か……悪くない響きだな」

「共に運命の契りを結ぶ者よ……伝説を創ろうではないか! この鎖の檻を壊し、永遠なる理想郷アヴァロンをこの手に!」

「あたしたちをここに閉じ込めるなんて、ほーんとにいい度胸してるわね~痛い目に遭わせてやらないと気がすまないわよ! ねえ、千紗?」

「う、うん……私もそう思うよ……」

 先ほどパーティ会場にいたクラスメイトたちは、次々と姿を現し、俺たちの大きな野望に賛成の声をかけてくれた。

 この光景を目にした俺は、心に熱い激流が走り、左手を握るとそれを上げて、見上げた視線が空をも貫く。


「待ってろよ、てめえら……さあ、学級崩壊の時間だぁ!」

 これは冗談じゃない。宣戦布告だ。俺たちを舐めると決していいことはねえってことを、必ず思い知らせてやる!

 そして俺の後ろからは爆弾が炸裂したかのように、絶大な拍手音が戦いの始まりを語ろうと空に響き渡る。

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【次回予告】


秀和「さて、安心できるのもここまでみてえだな。そろそろ謎を暴きにいくぜ!」

哲也「おっ、いよいよ本格的だな」

秀和「まあな。ずっとこのまま日常的な話だと、さすがにみんなも飽きるだろうと思うし、早く本題に入らねーとな」

菜摘「確かに、タグに『超能力バトル』が入ってるしね。これからの展開が気になる!」

千恵子「ふふっ、わたくしも、なぜか心が弾んで参りました」

聡「おーい作者、次の章はまだか? あんまり待たせんなよ~」

作者「そう急かさないでくれよ……こっちだって苦労してるんだぞ?」

美穂「苦労してるって言ってるわりに、ゲームやアニメばかりやってるだけじゃん」

作者「これも勉強の一環だ! 二次元を触れずしてどうやってラノベを書けというんだ!」

宵夜「その通り! いにしえより、『敵を知り、己を知れば、百戦危うからず』という言葉があるからな!」

優奈「ああもう、また訳わかんないことを言ってる! って、さっさと次行くわよ、次!」

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