第2話 プロローグ 絶体絶命のアンフェア・プレイ
プロローグ 絶体絶命のアンフェア・プレイ
Unfair play in a serious crisis
「ぐわああああー!!!!!」
巻き上がるほこりの煙の中で、また無実な一人が悲鳴を上げて息を引き取ってしまった。
屋根の上でその無惨な光景を目撃した俺は、思わず息を殺す。
これはゲームや映画のクライマックスシーンじゃない。正真正銘の「戦争」だ。
中世のイギリスを彷彿とさせる美しい街並みとは不釣り合いな、
街の住人たちは必死に抵抗しようと己の武器を振りかざすが、古き白刃や魔法では傷一つ負わせることもできず、歴然とした力の差の前ではあっけなく
だがこんな絶望的に不利な状況でも、立ち上がって残酷な運命に抗う人もいる。
「諦めちゃダメよ! 戦える人たちは敵を食い止めて、少しでも平民が逃げられる時間を稼ぐのよ!」
その中には、金髪の美しい女性が一人いた。彼女は様々な輝く宝石が埋まっている
「姫様の言う通りです! いくら敵が強すぎるからって、ここでへこたれっては、民たちに示しがつきませぬ!」
白銀の鎧を身に包んでいる護衛隊の一人は、姫と呼ばれる女性の期待に応じるべく、仲間たちの士気を高めようと叫んだ。
「西洋の姫君よ、実に勇気のある勢いじゃな……じゃが、まだまだ油断はできぬぞよ!」
キツネの尻尾が二本生えている小柄の少女が、刃物付きの扇子を格好良く構えながら、姫のほうを振り向くとニッコリと余裕の笑顔を浮かべる。
「そうですね……この世界の平和を守るためにも、ワタクシたちはこの手で何とかしなくては……!!」
三人目の女性は、長い水色の髪を風に靡かせながら、手に持っている杖をしっかりと握り締めて、戦いの体勢に入った。その引き締まった眉間の先には、一体何が見えるのだろうか。
そして三人は見えない自分の背中を大切な仲間たちを託し、敵への反抗を始めた。それぞれ得意の武器を自由自在に操り、鉄の
自分の置かれている環境を思い出した俺は援護しようと、身に付けている武器を手に取った。だが……
「危ない!」
どこからともなく響いてくる、焦りのこもった声。それを聞いた俺は声の源を探そうと後ろを振り向いたが、時は既に遅かった。
何の前触れもなく飛んできたミサイルが俺の近くに爆発し、それによる爆風に巻き込まれた俺の体はふっ飛ばされ、更に無慈悲な重力の作用によって俺は地面に落ちてしまう。
「い、いってぇ……」
何とか気絶せずに済んだものの、5階建ての建物から落ちた痛みもたまったもんじゃない。うう、腕の骨が折れそうだぜ。
だが、更なる危機は俺を襲いかかる。
鉄の甲冑を被った憎き敵の一体は、近くにいる俺の気配に気付き、おもむろにこっちに顔を向けてきやがった。
まるで「貴様もこれでおしまいだ」と言わんばかりに、その目から放つおぞましい光線が、なめるように少しずつ俺に浴びせている。
危機感で全身の血の巡りがおかしくなった俺は、震える手を恐る恐る持ち上げて、
引き金に触れている指は、未だに
たった一瞬だけで変化するかもしれない自分の命の脆弱さを、ここで思い知らされる。
思えばすべての始まりは、あの夏休みの最後の日だった。自分を鍛えてくれるはずの場所が、まさかこんな生き地獄だったとは。
あんたは一体なにを考えてやがるんだ、親父……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます