聖剣使いの性事情
アイアン停電
第1話 男子なら、誰にでも一度はよくある話
机の上に置かれたランタンが灯す暖色光が、暗がりの室内で二つの影を壁に映していた。
物静かな寝室の中で重なる影は俺と彼女のもの。
俺たち二人は互いに身を寄せ合い、ベッドの上に腰を下ろしていた。
お互いに言葉を交わすことなく引き結んだ口元は緊張で少しばかり強張っている。
けれど、この緊張感は悪くなく、逆に興奮するほどだ。
互いの膝が触れ合うほど密接しているためか、俺の膝に彼女の体温がダイレクトに伝わってくる。
揺れるランタンの光が照らし出す白人彼女はとても妖艶であり、その唇はしっとりと濡れていて、艶めかしく色づいていた。
「……ねぇ」
「なんだい?」
「シテも……いいんだよ?」
簡潔にして強烈な一言。
そう口にすると、彼女は細い指先で俺の胸元に円を描いてイタズラっぽく上目遣いをしてみせた。
「い、いいのか?」
「うん。だって、私たち……恋人同士じゃない?」
ごくりと喉の奥が鳴る。
と、俺は彼女の着ているブラウスのボタンを静かに外し始めた。
室内に響く秒針の音が妙に大きく聞こえる。
緊張で早まった心音が、俺の耳元で早鐘を打っている。
そんな中でも、脱衣作業は着々と進められていた。
「お、おぉ……!」
ようやく彼女のブラウスを脱がしきると、俺はそれをベッドの上へと静かに落とした。
外気に晒された彼女のきめ細やかな肌に視線が釘付けにされる。
すらりとした肢体と豊満な身体つきはとても女性らしく、綺麗な曲線を描いた美しい腰元に俺が片手を回して抱き寄せると、彼女がくすりと笑った。
「フフッ。どうしたの? ここ、触りたいんでしょ?」
そう言って彼女が指差したのは、豊かな胸を隠す黒のブラジャー。
そのフロントホックに俺が指先をかけると、ブラジャーが弾けるように外れた。
「あんっ! もぅ……いきなりはダメ」
俺の鼻先を人差し指でつつくと、彼女が愛らしくウィンクをしてくる。
今にもこぼれだしそうなその乳房は大きく突き出し、張りと艶で色づいていた。
そのひとつに俺が手を伸ばすと、彼女が咄嗟に両手で押さえ、照れくさそうに頬を紅潮させた。
「こういうことをするのキミが初めてだから……えっと」
「初めてだから?」
「その、優しくしてね?」
「ダメだ! もう我慢できない!」
「きゃあっ!?」
彼女の一言で俺の理性が完全に崩壊した。
俺は彼女をベッドに押し倒すと、胸元を覆う両手に手を掛ける。
もうこうなったら行くしかない……。
男にとってこれは最高のシチュエーションであり、漢気を見せつけるところだ。
「んもぅ、強引なんだからぁ~」
「ご、ごめんよ! でも、いいよね?」
少しだけ潤んだ瞳を閉じると、彼女は小さく頷いた。
そしてそのまま、胸元を押さえていた両手を除けてゆく。
「……お、お、おぉっ!?」
あと少し、あと少しなんだ……。
あともう少しで、彼女の美しくも淫らな双丘を拝める……って、あれっ?
「どうした? なんで動かないんだ!?」
頭部に装着したVRの画面上には2.5次元の白人彼女が潤んだ瞳で俺の顔を見つめている。
しかし、その先へ進もうにもVRがその動作を停止したまま動かない。
一体なにが起きたのかと、俺が当惑していると……砂嵐に変わった画面の中央に、えげつない文章が表示された。
『この先は特別会員専用コンテンツです』
「……なん、だと?」
その無慈悲であまりにも残虐な文面に俺は耐えきれなくなり、VRのヘッドセットをベッドの上に叩きつけた。
「ふっざけるなあああああっ! これからがいいところだってのに、この先は特別会員専用コンテンツだとぉ!? 純真無垢であどけない少年の心を弄びやがってこのクソ課金制度があああああああああっ!」
既にお気付きだと思うが、俺に彼女はいない。
その代わりにVRという文明の利器に頼り、俺は疑似体験を堪能していたのだ。
それが、ここからが面白いってところなのに、それを嘲笑うように発生した課金制度の緻密な罠。
運営の奴らみんな死ね。
まぁ、ちゃんと確認してなくて釣られた俺も悪かったとは思うけれど、これは流石に酷くない?
でもさ、そんな経験なんて誰にでもあることだろ?
エロゲーを愛する、健全な男子であるならば……。
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