04 事実は小説より奇なり
こうして、僕らの偽UFO動画作成に始まる一連の騒動はとりあえずの終息を迎えた。
今では「UFOの動画を撮った」者としてではなく、「麻薬密現場を撮った」者として皆からは認識されている。
もう隠しておく必要もなくなったのか? 辺田も那佐もあれが作り物のUFO動画であったことを胸を張って堂々と明かしているくらいだ。
そして、これは後日談であるが、それからしばらく経ったある日のこと……。
ピンポーン……。
夕刻、学校から帰宅し、西日に赤く染まる自分の部屋で無駄にゴロゴロしていると、不意に玄関のチャイムが静かな家の中に鳴り響いた。
「はーい! 今、開けまーす!」
その時、両親は留守で家には僕一人しかいなかったので、宅配か何かだと思った僕は慌てて玄関へと向かい、ドアの鍵を外していそいそと開けてみたのであるが……。
「どちらさまで……っ!?」
そこに立つ者を見た瞬間、僕は両の目をこれでもかというくらい大きく見開き、全身を流れる血が一気に凍りつくのを感じた。
そこに僕が見たものは、黒いトレンチコートに黒いソフト帽、黒いサングラスを着けた黒尽くめの男――まさに〝M.I.B〟そのものの姿をした人物だったのだ。
「どうもこんにちは。衿家さん、あなた、あのUFO動画を作ってSNSにUPした方の一人ですよね?」
唖然と目を見開いたままその場で硬直していると、生きた人間とは思えないような無表情の蒼白い顔で、黒尽くめの男は唐突に話し始める。
「灰皿を吊った偽物は別にいいのですが、あのオレンジ色の葉巻型母艦は問題です。我々もなるべくなら穏便に事をすませたいので、どうか早々に削除していただけないですかね?」
この前、M.I.Bについてネットで調べた時に見かけた体験談の通り、どこかで魚を焼く夕暮れ時の食欲そそる香りに混じって、そう告げる男のコートからは微かに硫黄のような臭いが漂っていた……。
(
UFO(ウホ)から出たまこと 平中なごん @HiranakaNagon
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