Tá daoine maithe ann.――善き隣人は、其処に居る

板久咲絢芽

はじめの彼の話

彼は、そうね、どういえばいいのかしら、いい人、だったのよ。

とても綺麗な陽にきらめく金髪と、大粒の宝石みたいな優しい緑の目をした、男の子。

ええ、幼い時はね、女の子に間違えられるくらい、可愛らしい感じの子。

その上、優しくて、頭も良くて、だからといってかけっこでビリとかもなくて。

他の男の子連中も一目置いていたわ。当然、イタズラを仕掛けないというだけで、女の子達の間でも人気者だったけれど。

私は親の都合で、幼い頃に引っ越してしまって、その後はまったく会わなかったのだけれど。

え? ふふ、そうね。ここまで覚えてるくらいだから、初恋というには淡すぎる感情は、幼い頃の私にもあったのよ。

本当に、むかし話の王子さまみたいな、なんでもできる子だったわ。


――ええ、ええ、それが幸運で、でも、とてつもなく不運な事だったんでしょう。

結局、彼はそのまま変わらずに、だから、そのせいで、だったんでしょう。


善き人々ディーネ・マハは、金の髪の人間と、称賛や嫉妬の的になる人間を好むのだもの。

彼は、どちらも満たしてしまっていたのね。

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