なこがたり 夜の蝶〜JKがキャバ嬢やってみた〜
nako
#1 池袋編 「スカウト」
世の中は腐っている。
ファミレスのバイトを辞めた。
店長からは酷いイジメを受けて毎日怒鳴られた。
副店長からは触られたり、謎の監視のようなセクハラを受けていた。
マネージャーにはヤリ捨てされた挙句、それ以降辞めるまで無視され続けた。
彼氏?元彼?立場のハッキリしないその男は女が出来たくせに私の家に入り浸る。
「ねぇ何で家帰らないの?彼女来てるんでしょ?コンビニ行きたいんだけど」
「これからアニマックスでガンダム始まるし、彼女さー摂食障害だから目の前で飯食うの可哀想じゃん。今眠剤で寝てるしね。俺もラーメン食べたい。俺にも買ってきてーお願い!」
もう死にたい。
どいつもこいつも男は馬鹿ばっかりか。
17歳高校3年生の春。
通信制高校なので学校に行く必要はあまりない。
池袋で適当に時間を潰そう。
そうだ、パルコに行って気分転換しようと歩き出したら…
「すみません」
声が聞こえた。
振り返ると今にも死にそうなサラリーマン風の男がいた。
「びっくりした…。何ですか?あなた誰?」
「本当にお願いです!うちの店で働いて下さい」
深々としたお辞儀。てか、この男凄く顔色が悪い。
私は溜息をついた。またスカウトマンか。
この頃まだスカウトの規制がなかった為に、街中はキャバクラや風俗のスカウトマンで溢れかえっていた。
私は老け顔だったから標的にされる事が多く、1日に数十人から声をかけられる日もあった。
面倒な事に高校生だといくら言っても信じてもらえない。
酷いケースだと20分以上付け回される事もあって本当に迷惑だった。
普段はなるべくイヤホンで音楽を聞いて無視しているけれど、今日はたまたま忘れてしまったのだ。
「はぁ…なあに?キャバ?風俗?」
「キャバなんですが、女の子が足らなくて困っているんです。体験入店だけでもお願いします」
「うーん、申し訳ないけどやらないよ」
「お姉さんなら3出しますから!」
「3ってなに?」
「時給3000円という事です」
「時給!?そんなにもらえるの?」
「指名とか取れればもっと稼げますよ、夜のお仕事は初めてですか?」
「うん、やった事ない。でもね…えーっとね、私は高校行ってないんだけど…この前18歳になったばかりなの。例えばそれでも働けるの?」
まぁ大嘘ですけど。高校生なんですけど。
「18歳なら大丈夫です。是非来てください!お願いします。出来れば明日体験入店をお願いしたいのですが大丈夫でしょうか?」
「バイト辞めたばっかりだから大丈夫…です…」
「それでは17時に池袋西口前の交番で待ち合わせましょう。お迎えに行きます。着いたらこの名刺の電話番号に連絡下さい」
「あ、はい…」
はいって言っちゃったよ。
私がキャバ嬢!?
どうしよう…今からでもちゃんと正直に本当の年齢言って断ろうかな。
でもバイト辞めちゃったしお金ないよ。
体験入店だって言ってたから体験してみない事には分からないよね。
これって犯罪…なのかな…?
でもこのスカウトマンの人、今まで会ったスカウトマンの中で1番礼儀正しい。何となく信頼出来そうな気がする。
「あのドレスとかはお貸ししますので、くれぐれも身分証明書だけは忘れないで下さい。コピー取りますので」
ヤバい。そりゃそうだ。どうしよう。
「あ、あのね、私未成年だし、身分証明書持ってなくて中学の卒アルしかなくって…大丈夫かな」
「あーそうですか…それは上に確認してみますが…」
「でも私この前誕生日だったの。4月3日!18歳になったの」
「わかりました。僕の方で何とかしましょう。大丈夫ですよ。では明日頑張りましょうね!」
「あ、はい。よろしくお願いします…」
決まってしまった。
万が一バレたら捕まるのかな…。
未成年だから補導だったかな?
こういう無駄な知識は家でガンダム見てる男に聞くのが早い。
電話しよう。
「もしもし、なこだけど明日キャバクラで働く事になったの」
「は?年齢的に無理じゃん」
「なんか誤魔化せそうなの」
「あー地元の友達に居たわ。誤魔化せるならやれば?」
「もしバレたら捕まったりするのかな?」
「いや補導でしょ。店側は大変らしいけどねー。まぁやってみれば?」
「分かった」
テメェら全員見返してやる!
男のせいで失ったもの、全部取り戻してやる!
続
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