魔王たおした後、死体どうしてる?

ちびまるフォイ

魔王のからだの有効活用

「グアアア! やられたぁぁーー」


「はぁ……はぁ……やった! ついに魔王を倒したぞ!」


勇者は高々と剣をかかげ、世界の平和が取り戻された。

そして、新しい問題が生まれた。


「……この死体、どうしよう」


魔王の城はこの後、大型アミューズメントパークへと改装予定。

このまま放置していくわけにもいかない。


「……つか、臭っ! なんか臭ってきた!!」


魔王が死んで新陳代謝が行われなくなったので、

徐々に魔臭が漂い始めた。


「細切れにしてトイレに流せないかなぁ……」


勇者は英雄にあるまじき重犯罪者顔負けの発想で

魔王の死体を切り刻もうとしたが、グロ耐性がないので断念した。


「しょうがない、どこかに埋めに行こう」


魔王の遺体を担いだ勇者は道中にあった「還らずの森」にやってきた。

必死に穴を掘ると、その中に魔王を入れた時おじさんに止められた。


「おい、おめぇ、なにやってんだ」


「ああ、実は魔王を倒したんですが、遺体を埋めようかと」


「勝手にそんなもん埋められたら困るよぉ。

 魔王の遺体にひきよせられて悪いもんが寄ってきたらどうするんだい」


「でも死んでるし……」

「とにかく、そんな縁起の悪いもん埋めるんじゃないよ」


世界を救った勇者が土地管理者のおじさんに

ガチ説教されて涙目になる様は誰の目にも触れられなかった。


その後も勇者は幾度となくひと目につかない街の片隅や、

どっかの草原のじゃまにならない場所に埋めようとしたが

そのたびに怒られて心が折れてしまった。


「くそ……どいつも縁起が悪いって魔王を遠ざけてやがる。

 そりゃ世界を支配していた悪いやつだけど

 死んでからもそんなに嫌わなくたっていいじゃないか」


もはや勇者の定義をゆるがすような弱音まで出る始末。

ひざを抱えた勇者の視線の先には、ちょうど火葬場があった。


「そうだ! あの手があった!」


例によって火葬場は「魔王を燃やすなんて!」と断られたので、

勇者はドラム缶に魔王を入れて魔法で火をつけた。


「……全然燃えないな」


いくら火力をあげようが燃料を打ち込もうが、

魔王は消して燃えることはなかった。


「そういえば、魔王と戦ったときも魔法は効かないって

 めっちゃ言っていたような……死んでも効果あるのか」


いかな魔法をも無効化する体は死後も顕在でますます処理に困る。


いっそ海にでも投げ込んで知らんぷりする作戦を実行したが、

魔臭により、死んだ魚が海面に浮かんでしまったため、早々に引き上げた。


「ああ、いったいどうしよう……」


対応に困った勇者は魔王の遺体を見ながら頭を抱えた。

そうこうしている間にも痛み始めた魔王の遺体から匂いが出てくる。


これ以上、処理できないまま放置していれば、魔臭で死人が出るかも知れない。

おもに勇者。


「ええい! もうこれしかない!」


勇者はやぶれかぶれで蘇生魔法を唱えた。



「……ム? ワハハハ!! 甦ったぞ!!」


蘇生された魔王は高らかに笑った。

けれど、体の自由はしっかりと封じられている。


「グッ、勇者よ。貴様、いったい我をどうするつもりだ」


「いや、お前を倒したのは良いけど、その後の処理に困って……。

 どうすればお前の遺体をうまく処理できるか教えてくれる?」


「愚かな人間よ。教えるとでも思っているのか?

 教えればお役御免とばかりに殺すであろう?」


「考えてなかった!」

「我はこんなやつに負けたのか……」


魔王は残念そうにしていた。

強さとは知力を捨てたときにこそ得られるものだった。


「フフ、これだけは教えてやろう。

 我はいかなる魔法もきかないし、

 女神の祝福を受けた伝説シリーズの武器しか通じない」


「ぐっ……もう使わないかと思って捨てちゃった」


「宇宙空間でも生きられるし、絶対零度でも生きられる。

 しかも、蘇生するたびに力が増すというわけだ」


「そんな……!」


「我を復活させたのは失敗だったな。

 身動きは取れないが我が存命だとしれば他の魔物がどう思うか。

 きっと我を救いにやってくるであろうよ」


勇者は頭を下げてしまった。


「どうした勇者。なにも言えまい。とんだ失策だったようだな。

 我をどうする気だったのか知らないが、我を処理することなど不可能だ!」


「……」


「おい、聞いているのか」


「……」


「ククク、おろかな人間よ。

 せいぜい手からこぼれ落ちた平和に後悔するが良い」


「お、買い手がついた」

「へ?」


勇者は手にしていたスマホを魔王に見せた。


「いやもう倒せないし、処理できないなら、これしかないなって」


魔王をキレイに梱包した勇者は指定された住所に送り届けた。




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利用者のコメント


★★★★★ 大変良い


娘のクリスマスプレゼントに使わせてもらっています!

おままごとの相手が欲しかったと喜んでいます!


たまに「もう許して」と泣きそうな顔をしますが、

元気な娘の遊び相手ができて本当に良かった!

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