雨に狂えば。

黒犬

プロローグ

1話 儚さを知った君へ。

 「卑怯者!」薄暗い雲の下で、声が聞こえた気がした。

雨の混じった風を浴びながら、私は笑っている。

「あははは!」心からの笑いでは無い。

私は無理やり笑っていた。

少女は傷ついているのに、傷が開くことも気にしないで「笑っていた」。

笑うことしか、できないようだった。


「人間はできることしかやらない」でしょ?


自信があれば、はじめから歪な手段なんか取っていない。

当たり前に生きられるのなら、何も苦労なんかない。

例えば私には友達が一人たりともいやしないけれど、

「欲しくない」わけじゃない。

むしろずっと憧れていた。そういう友情云々に。

でも無理だったんだ。

ろくに苦労せず、努力もせず、友達が作れる人はいるんだろうか?

十中八九、いるのだろう。

でも、私は違った。

別段、誰かから奪われたわけでもない。

言うなれば、「当たり前に生きたら」友達なんかいなかった。

そういうものだ。私の人生なんて。

こんなことを言っていると、また馬鹿にされそうなものだけれども。

こんな言い方しか、私にはできない。


……まあ、いくら戯言を言ったところでしょうがない。

これは、そんな私が「人と」生きた記録。


雨が降り続いてやまなかった、一か月のお話。

もちろんこれは青春群像劇なんかじゃない。

苦しいことから生まれた、ただの、「大切な思い出」なんだから。



 



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