宝島

HaやCa

第1話

 クラスメイトとふたりで宝島に行くことになった。言い出したのは彼のほうで、なんか恥ずかしそうだった。

 先週見つけた地図、ふたりして喜び合った。それなのにどうしてか、悲しい気持ちになる。

 それも明日まで。


 翌朝、彼から電話があった。なんと私を迎えにくるという。臆病な彼なのに、どうしてそこまでするのだろう。ちょっと怪訝になった。


「おはよう」

「おはよう。珍しいじゃん。あんたから誘うなんて」

「それはその。。。気まぐれというか」

「気まぐれねぇ」

 腕でこづくと彼の顔は真っ赤になった。今にも逃げ出すんじゃないかってくらい、ほんとおかしかった。


「おう。ふたりともデートか? くははっ」

「違います。バカいってないで早く船出してください!」

 申し出を受け入れてくれたおじさんに文句。からかわれてることが少し恥ずかしかった。

横目に見る彼は満更でもなく、ただ海の上を見ている。

 

「ほんじゃ夕方迎えにくっから」

 去っていくおじさんに手を振り、わたしたちは宝島に降りた。

「宝島のくせに、なんもないねー」

「そうだね。僕も金銀ザクザクって思ってた」

「まっ、島の奥にあるかもだしいってみよ」

「うん」

 

 季節は夏、持ってきた2リットルの水もすっからかん。

日が暮れる間際、わたしたちは砂浜に横べった。

「けっきょくなんもないじゃん! もうっ!」

「はははっ。ほんと。僕も疲れちゃったよ」

 笑い声をあげる彼は、少し寂しそうになった。潮の音が沈黙を押し流す。時間が止まったみたいだった。

「あのさ」

「ん、なに?」

「なんでもない」

「子供みたいだ」

「バカにすんなっ。ちゃんと言うし!」

「じゃあなに?」

 彼はわたしの手を引いて、ゆっくり立ち上がる。

水平線に消える陽がチカっと光った。

「また来よう。来年も再来年もずうっと」

「うん。僕も同じこと考えてた。不思議だね」

 握った手はあたたかく、ともすれば消えそうになる。

心の距離が以前よりぐっと近づいた気がした。

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宝島 HaやCa @aiueoaiueo0098

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