いじめ

マミがいなくなってからの、この一年弱、俺はなにも出来なかった。


なにも出来ないというよりは、やることやること裏目に出た。


何一つ、何の成果もあげれなかった。


いや、1つだけ褒められたことがあった。


何人か俺のスカウトして、入店した従業員はいる。


その後輩には、売上ではことごとく抜かれていったが。


そこに関しては褒められた。


いや、今の俺にはそこしか褒める要素がなかった。


だが、俺は内勤ではない。


従業員を集めるのは俺の仕事ではない。


客を呼び、客に金を使ってもらうのが仕事だ。


なにをやってもうまくいかず、その矛先は自分がスカウトした従業員にも向いた。


自分がスカウトした従業員は5人いた。


一番最後に入店したのがハル。


未成年だったが、黒髪が似合う好青年だった。


身長も高く、ジュノンボーイに選ばれてもおかしくないようなイケメンだった。


中身も純粋でとても良い子だった。


こういう手の人間は、努力を怠るタイプが多かったが、ハルは違った。


先輩の話をちゃんと聞くし、客の受け答えも出来てた。


俺はホスト歴1年半なのに、ハルにスタート地点の段階で負けてた。


悔しかった。


ハルに嫉妬していた。


自分がスカウトしたのでなおさらだった。。


誰にぶつけたらいいのかよくわからない感情が、常に渦巻いてた。


こういう時、本来であれば売れてて余裕のある先輩に話を聞いてもらうのがベストだった。


先輩の言うことは散々聞いてる。


にも関わらず1年半も結果が出てない。


俺にはそんな余裕はなかった。


2人で一緒にヘルプに着いても、チヤホヤされるのはハル。


目に留まるのはハル。


俺はいつもヘルプで来る、売れないホスト。


客はハルと喋りたい。


ホストに来る客がイケメンを求めるのは当然だ。


ハルが入店してから2週間が経った。


俺はイライラが溜まりに溜まっていた。


ある席で俺とハルがヘルプに着いていた時にハルに向かって


「やぱイケメンはちゃうな~!」


「イケメンはやっぱおもろいな~!」


そんな感じのイジリをした。


それがまた意外に客にウケた。


あくまで自分のストレス発散のためだったが、客にウケた。


ここで俺は気を良くしてしまい、ここからエスカレートしてしまった。


営業中だけじゃなく、普段からもそのようなイジリをした。


1ヶ月後、ハルは急に辞めた。


カナデから呼び出された。


「ハルはゲンキのいじりに耐えれなかったんやって。泣いてたで。」


俺は最低の人間だった。


ホストとしても終わってる。


しかし、カナデはそんな俺に怒らなかった。


諦められていたのかもしれない。


周りは俺のことを何も思ってないかもしれない。


俺はこの店に居づらいという感覚が増していた。


自分の行動で勝手に自分を居づらくさせていた。


それをどこかで望んでいるかのように。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る