ユカ⑪

「ヘルプと仲良くさせるのも担当の仕事だぞ。」


カナデによく言われていた。


そしてカナデはヘルプと仲良くさせるのがとてもうまかった。


ホストは個人プレーのようだが、実はそうでもない。


もちろん、そのホストのやり方にもよる。


しかし、個人プレーだけじゃない方がやりやすい。


一人だけでやるより、他のホストを巻き込んだほうが効率が良い。


客が増えれば増えるほど、ヘルプが大事になってくる。


営業中に客が被ると、色々な席を回らなければいけない。


すると、客は自分が指名してるホストより、指名してないホスト、つまりヘルプと過ごす時間の方が増えてくる。


そうなると客の満足度を上げるには、自分の接客を良くするよりもヘルプが大事になってくる。


とはいえ、入ってきたばかりの新人に「接客うまくなって俺の客に気に入られて。」


なんて言っても無駄だ。


こちらから仲良くなるように仕掛ける。


それが一番手っ取り早い。


仲良くさせる方法はいくつかある。


同じ歌手が好きなホストにヘルプに着いてもらう。


シンプルに顔が好みのヘルプに着いてもらう。


考えてヘルプに着いてもらうことで、好みのヘルプが見つかりやすくなる。


俺はユカに対して、店を疑似家族にさせることで、信頼関係を築かせることに成功していた。


悩んでそうな時はこのヘルプ、兄役。


真剣な悩みがある時はこのヘルプ、父役。


しょうもない話をしたい時はこのヘルプ、友達役。


使い分けをしていた。


疑似家族というか、疑似友達も作ってる。


もはや疑似社会集団。


風俗店では基本的に、働いてる女の子同士で仲良くなることはあまりない。


というより、店側が女の子同士で仲良くならないように努力していることが多い。


女の子同士で連絡先交換禁止だったり、待合室を個室にして会わないようにしたりなど。


店の方針によるので、すべての店舗がそうというわけではない。


そのため、自分が所属する社会集団として風俗店は物足りない。


会社でも家族でもサークルでも、人間は何らかの社会集団に入る。


それによって「生きてる」ということを実感する。


家族と仲悪い女の子が、ホストにはまりがちなのはそのためだろう。


疑似だろうが、その人がその集団に満足してるのかが大切だ。


血縁関係だけで家族と言い張る、くだらない奴が多い。


ユカの父親も、父親と言う資格はない。


この時の俺に罪悪感など微塵もなかった。


むしろ、ユカにとって良いことをしている気持ちしかなかった。















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