売れないホスト物語

リニューアル②

リニューアルオープンのための一時閉店まで3か月。

客への発表はまだ禁止だった。

系列店への発表は1週間後のミーティングとのことで、それまでは口外禁止。

リニューアルに関して特になにも思わなかったが、ほんのわずかに頭をよぎったことがある。

「リニューアルオープン前にホスト辞めようかな。」

辞めたい、という気持ちはなかった。

ホストを始めて1年半が経つ。

いまだにまったく売れてない俺は、店的に必要ないのではないか。

いらないのではないか。

いる意味はあるのか。

そういった気持ちだった。

ダラダラ続けるより、リニューアルオープン前にサラッと辞めた方が潔いのではないか。

いや、やっぱり売れるまでやりたい。

他の人に話す程でもない。

いや、どうしようか。

俺は悩んでいた。

リニューアルオープンまでの仕事はいつも通りだった。

たまに客が出来たと思ったらすぐ切れる。

月の売上は平均して20～30万円だった。

歴に対して、全然ダメだった。

営業前の掃除中、めんどくささと自分へのイライラが増えてきた。

日々ヘルプ。

リニューアルオープン前に辞めようかなとも思う反面、環境が変われば俺も売れるんじゃないか。

店が変われば自分もなにか変わるんじゃないか。

そんな期待もあった。

3ヶ月が経ち、一時閉店。

1ヶ月半の間休みかと言うとそうではなかった。

リニューアルオープンをしたら店が広くなる。

そのために従業員を増やさなければいけない。

スカウトのみをしなければならない。

出勤したければ系列店は営業している。

一応、出勤は出来るし売上は上げれる。

日給は出るが、歩合の給料を貰うには系列店に出勤するしかないとのことだった。

とりあえずは一旦昼間のスカウトを皆で頑張ろう、とのことだった。

昼間に一旦店に集まり、SNSや出会い系アプリを駆使してスカウトをする。

そのあと、いくつかのチームかに分かれて、街に出る。

時間はあるのでいつもより遠くに行くチームもある。

大阪だけに限らず、兵庫県、和歌山県、京都府なんかにも行くチームもあった。

皆が皆、真面目にやってるかと言われたらそんなことない。

職業でホストを選ぶやつらだ。

ナンパならまだしも街でスカウトなんか真面目にやるわけない。

真面目にやってる奴、ふざけて遊ぶ奴、ボケっとしてる奴。

色々な奴がいた。

カナデはそういう時はとことん遊ぶ人だった。

俺はミナミに居たくなかったため、なるべく遠くに行くチームを希望した。

気晴らしをしたかっただけだ。

スカウトはたまにした。

街で「ホストやらない？」

って言って、ホストをやるやつなんてほぼいない。

俺は経費を使って、関西中に行った。