忘年会

3Q

忘年会

忘年会。年を忘れる会。


みな思いおもいに宴の機会を楽しもうと必死な中、私はイヤホンで音楽鑑賞中。

そういえば、今年は、死にたいくらいに嫌なことがあったと思い出した。

職場以外では会ったこともない人達の中、独特の緊張感も相まってあ、息が詰まった。

そうだ。

話しかけられもしないスミっこ席の私。戯れに呼吸を止めてみる。


ん・・・・・・・・・。


どうだ、苦しそうだろう。怖かったら、話しかけてみろ。


・・・・・・・・・・・・。


しめたものだ。何人かこちらを見ている。


・・・・・・・・・ぅぅ・・・・・・・・・。


横目で隣を覗くと、いつも私を見つけてはねちねち虐める佐々木先輩が何かを叫んでいた。

お生憎様です。私には何も聴こえないんですよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


…え?

佐々木さんが泣いていた。


呆気に取られていると、イヤホンを取り上げられた。

私の耳に、雑な音群が滝のように流れてきた。


『オイ大丈夫か?!』と、佐々木さん。


『あ…は、い…』


『大丈夫なら、いい!!』


それだけ言って、佐々木さんは別の先輩方の席に行ってしまった。




年を越して、早くも3ヶ月が過ぎた。


私はまだ、先輩がなんで泣いていたのか、訊けていない。

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