episode 2 - 6 of 6
「よぉ、早いな」
彼が1時5分前に駅に着くと、既に彼女は花壇のそばに立っていた。
「ちょうど良い時間のバスが無くってさぁ、10分も前に着いちゃった」
彼は彼女のすぐ隣まで来ると、手すりに腰を下ろした。
「それにしてもショックだよなぁ。あいつに彼女ができるなんて」
「あなたはどうなのよ、普段のあの元気の良さなら、彼女が居てもおかしくなさそうなのに」
「時々そんなことを言われるんだけど、全然ダメ。気配すらない。それよりお前はどう?」
「私も今日来るあの娘も全くダメなのよね。男子達の見る目が無いんだって二人で慰め合ってたんだ」
取り立てて美人ということは無いけれど、性格もスタイルも良いので、確かに一理あるなぁと、改めて彼女を見ながら彼は考えた。
「あっ…あれ見て!」
彼女の言葉に改札口の方を向くと、あいつが女の子と腕を組んでこちらに向かって来るのが見えた。
「あの娘だよ、俺がこないだ見たのは。あの野郎彼女を連れてきやがった!」
「あなた本当にちゃんと見てたの? よく見てごらんよ、あの娘が誰だか」
「俺はあんな髪の長いかわいい娘なんて知らないぞ!」
「もぉ、鈍いんだから! 彼女が眼鏡をかけて髪をポニーテールにしたのを想像してみなさいよ!」
「え? あぁぁぁ…!」
近づいて来る二人を指差しながら立ち上がる彼の仕草があまりにも面白かったので、皆笑顔になった。
「やぁ」
「やぁじゃねぇよこの野郎。しかしお前の彼女がクラスメートだなんて思ってもみなかった」
「ホントよねぇ。私にも黙っているなんて!」
「ゴメンね、隠すつもりは無かったんだけど、何か言いそびれちゃって」
「ま、そういうことで」
「何がそういうことだよ。今日はいろいろ聞かさせてもらうから覚悟しとけよ!」
「そうよねぇ、二人のデートのお邪魔虫になっちゃおうかしら」
「ま、ダブルデートだと思ってお手柔らかに…」
「ダ…ダブルデート?」
よっぽど動揺したのか、途中でひっくり返ってしまった彼の声に、空を仰いで皆で笑った。
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